東京都杉並区の田中良区長。
都の発表では自宅待機者が「いない」のです。
例えば4月13日時点で、都内の陽性者数は2158人でした。
うち入院中が2064人、死亡が42人、退院が52人とされています。
どこにも「自宅待機者」はいません。
都はウイルス対策用の病床を2000床確保したとしています。
4月7日からは、208室のホテルを丸ごと借りて、
約100人とも言われる軽症者を病院から移しました。
ならば、入院中とされている2064人は全員収容できる計算です。
にもかかわらず、大量の自宅待機者が発生しています。
数字に嘘があり、実態が闇に隠されているのです。
と訴える。
杉並区内の医療関係者は、「入院中の患者の呼吸状態が悪くなり、
人工呼吸器を装着しなければならなくなっても、
感染症指定病院の転院先がありませんでした」と語る。
東京で新型感染症が発生した場合に真っ先に受け入れる役割を持っている都立病院では、
外気との圧力差でウイルスが広がらないようにした「陰圧」の病室を整備しているところがある。
しかし、一般の民間病院にそのような病室はない。
そこで、病室の線引きをしたり、一般病床との動線を分けたりするだけでなく、
感染症対応のスタッフも確保しなければならない。
それどころか、感染者を受け入れていると知られた段階で風評被害を受け、
他の症状の受診者が激減してしまう。
「各院とも毎月1億円とか2億円とかの赤字が発生すると言われています。
そんなことを続けていたら経営が持ちません。長い戦いになると言われているのに、
病院そのものが破綻してしまう」と区関係者は危機感を募らせる。
区内ではいくつかの病院で、
新型コロナウイルス用の発熱外来がプレハブやテントで整備されている。
ここで働く医師や看護師は防護服を着なければならず、
これから暑くなる季節はストレスと肉体的な疲労にさらされる。
一方、個人の開業医も、感染が疑われる患者が外来に来ると、
スタッフに移る恐れがあり、専門の外来を受診してもらいたいのが本音だ。
そこで杉並区は、病院で整備されている発熱外来には、開業医にも詰めてもらえないかと考え、
その分の日当を1日当たり約16万円分支払う方針を固めた。
詰めてもらうのは1回当たり3~4時間程度になる見込みで、実質は5~8万円程度になるようだ。
「今がまさに分岐点です」
こうした医師への日当は、都が既に約3万円を補助している。
ところが、都は区の方針を知った段階で「区が出すなら都は支出しない」と決めた。
これに対して区関係者は「とんでもない態度です。
開業医は診療所を休み、場合によっては感染の恐れもあるのに、わざわざ来てくれるのです。
ならば逆に都に聞きたい。もし都の約3万円の補助だけだと、
自分が経営する診療所の看護師や事務員の給料も支払わなければならないのに、
開業医は発熱外来に詰めるだけで赤字になりかねない。それでいいのか」と憤慨する。
区は都が支出を止めた分を代わりに負担する方法を検討している。
「民間病院や診療所は、新型コロナウイルス対策に関われば関わるほど疲弊していくのが現状。
そのような事態を、国も都もシミュレーションしていなかったのではないでしょうか。
これでは第二次世界大戦で物資の補給もなく多くの兵士が死亡したインパール作戦と同じです。
新型コロナウイルスは国や都の医療政策や政治家の都合に合わせてくれません。
こちらが合わさなければウイルスとの戦いに負けてしまうのです。
今がまさに分岐点です」と区関係者は危機感を募らせながら、新型コロナと戦う姿勢を見せた。