日本学術会議が推薦した新会員候補6人が任命されなかった問題で、
6人を除外する前の推薦者名簿を「見ていない」と断言した菅総理。
菅総理は名簿を見ないで「総合的・俯瞰的な判断」ができる祈祷師か呪術師か。
菅総理は6人を除外した理由について「総合的・俯瞰的な活動、すなわち広い視野に立って、
バランスの取れた行動をすること、国民に理解される存在であるべきことなどを念頭に判断している」
「推薦された方々がそのまま任命されてきた前例を踏襲していいのか考えてきた」と説明。
自らの判断であることを強調した。
その一方で、除外された6人を含む105人全員分の推薦者名簿は「見ていない」と発言。
挙句、「自分が決裁した文書では、すでに6名は排除されていた」と言い出した。
矛盾だらけだ。
ウソを付けばこういうことになる。
総理自身が判断して排除したということが大きな問題となってきたので、
官僚が勝手に判断してつくったリストを、中身を見ないで発表したということにしたいのか。
中曽根内閣の時に丹羽兵助総務長官は、
「学会から推薦していただいた者は拒否しません」と断言している。
あくまでも「形式的な任命権」となっている。
しかし、法の解釈を勝手に変えたのが、安倍晋三元総理だ。
安倍総理は、国会で「私は立法府の長ですから」などと、中学生でも分かりそうな、
「三権分立」を理解していない発言を堂々としてきた。
総理どころか、議員の資格もない発言だ。
2014年7月1日に閣議決定した「集団的自衛権の行使容認のための憲法の解釈変更」
地球の裏側まで、武装した自衛隊を出動させて他国の戦争に参戦すると明言。
それを「自衛の範囲」だと違法解釈した。
最近で言えば、安倍総理の息の掛かった東京高検の黒川弘務検事長(当時)を、
検事総長にするため、それまではできなかった定年延長を可能にする法律の解釈変更を、
水面下で密かに実行していた。
行政府の長である総理大臣が、このように自分勝手に法律の解釈を変更する行為は、
立法府の立法権に対する不当な侵害であり、完全な越権違法行為だ。
第七条 日本学術会議は、二百十人の日本学術会議会員(以下「会員」という。)をもつて、
これを組織する。
2 会員は、第十七条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。
3 会員の任期は、六年とし、三年ごとに、その半数を任命する。
日本学術会議は2016年、会員が70歳の定年を迎えるため、
その補充候補者の一覧を首相官邸に提示した。
当時の安倍総理は、この候補者の中から、総理自身が強行した安全保障関連法に反対する、
学者3人を名指しして、別の学者と差し替えるように注文を付けた。
当然のことながら、日本学術会議は候補者の差し替えには応じなかった。
しかし、安倍総理も頑として引かず、自分の気に入らない3人を任命しなかったため、
日本学術会議は3人の欠員が出た状態での運営を余儀なくされた。
加藤勝信官房長官は「現在の制度になった2004年度以降、推薦候補が任命されなかったのは初めて」
と説明したが、大嘘だったことが露呈した。
菅総理は、「政府の方針に反対する官僚は異動してもらう」と公の場で官僚を恫喝。
戦争に反対する科学者は排除しなくてはいけないとの論調自体が愚の骨頂。
日本国憲法に、戦争放棄・戦力の不保持・交戦権の否認が規定されており、
戦争に反対する有識者がいなくなれば、それこそ一大事だ。
そもそも、学者がいくら反対意見を述べても聞く耳もたない政権なのに、なぜこだわるのか。
まだ総理になってあまり時間は経っていないが、
菅総理の浅薄性、姑息さ、陰湿さがますます露呈する。
任命されなかった1人で早稲田大学の岡田正則教授は、
「推薦段階の105人の名簿を『見ていない』ということは、
学術会議からの推薦リストに基づかずに任命したということです。
これは明らかに、日本学術会議法の『推薦に基づいて内閣総理大臣が任命する』
という規定に反する行為です」と述べ、違法性を指摘した。
そのうえで、「6人の名前を見ることなく決裁したということは、学術会議からの6人の推薦が、
任命権者に到達していないのですから任命拒否はありえないし、なしえないことです。
任命権を有する内閣総理大臣に推薦リストが到着する前に、
何者かが名前を105人から99人に削除したということであれば、
総理大臣の任命権や学術会議の選考権に対する重大な侵害です」
と、即座に是正するよう求めた。
「学問の自由に政治権力が介入すると、真理が追究できなくなり、国は衰退していきます。
憲法で保障された学問の自由は権力者にも国民にも極めて重要なのです。
菅政権のここまで露骨な介入は近代ではまれに見るものです。
独裁国でも、もっと上手に“介入”するはず。
米国の大学での署名活動は『日本はそんな国なのか』と、世界に異様に映っている表れだと思います。
世論の力で任命拒否を撤回させなければ、日本は民主主義国扱いされなくなります」
と、国家の危機をあらわにした。