コントレイルの三冠制覇は父ディープインパクトとの親子2代での達成。
それも無敗での達成は日本どころか世界にも例を見ない大記録。
25日に京都競馬場(京都市伏見区)で開催された中央競馬の菊花賞(GI)で、
優勝したコントレイル(牡おす3歳)は、皐月さつき賞、日本ダービー、菊花賞を制し三冠馬を達成。
騎乗した福永祐一騎手(43)は「三冠ジョッキー」の称号を手にした。
19歳でデビューしてから25年目、「天才騎手」と呼ばれた父、洋一氏(71)の背中を追い続け、
その父も成し得なかった偉業にたどり着いた。
1970年から9年連続最多勝を獲得した洋一氏は79年のレースで落馬して騎手生命を絶たれた。
当時2歳の福永騎手は、騎手としての父の記憶は明確ではない。
それでも、洋一氏の長男として96年にデビューすると、父を知る調教師から、
「洋一に世話になったから」ということで、有力馬を任された。
騎手として常に洋一氏と比較され「センスがない」と酷評された。
30歳を過ぎて騎乗フォームを見直し、馬の推進力を引き出す技術を磨いた。
福永騎手は「天からの授かり物のような幸運を感じる。偉大な父を持つというのは、
コントレイルと重なるかもしれないけど、自分はそれほどできた息子ではないですね」と、
三冠達成に謙遜しながら笑顔を浮かべた。
レースは決して楽ではなかった。
アリストテレスの鞍上、クリストフ・ルメールが打倒コントレイルで徹底マークをした。
外から離れずに圧をかけてきたアリストテレス。
それまで落ち着いて走っていたコントレイルも、掛かるしぐさを見せた。
そして最後の直線、5番手まで上がっていったコントレイル鞍上福永は普段よりも少し早めに仕掛た。
ゴールまで残り400mを過ぎるあたりで、前を走るバビットらを捕まえて先頭に立つと、
いよいよ三冠が目の前に、ゴールまであとわずか。
しかし、これを待っていたかのようにムチを打ちスパートを掛け、コントレイルに並びかけてきたのが、
アリストテレスはルメールに応えるように外から加速、脚色はアリストテレスの方が優勢で、
いつ差してもおかしくない状況となった。
コントレイル絶体絶命か。しかし、福永騎手もムチを入れ、コントレイルが踏ん張る。
その姿は今までのレースよりも泥臭く、必死さが滲み出ていた。
食いしばるコントレイル、ムチを打つ福永騎手。
「期待にこたえなくてはいけない」その一心で走っているように見えた。
結果、コントレイルは迫りくるアリストテレスをクビ差凌いで勝利した。
福永機種は「決してベストパフォーマンスを発揮できたわけではない」
と語ったように、今回の菊花賞はコントレイルの本来の走りではなかった。
それでも、この大舞台で勝利した。
三冠馬となったコントレイルの戦いは、もしかするとまだ始まったばかりなのかもしれない。
ほとんどの人は興味もないのだろうが、コロナ渦のなか、一つの物語が世界へと夢は広がっていく。
現実を忘れさせてくれ、勇気をもらった一時だった。