防衛相に”告発状”提出。
NEWSポストセブン / 2020年11月10日
国家の安全保障を担う防衛省に前代未聞の騒動が起きていた。
11月7日、防衛大の学生の新型コロナ感染が判明した。
全寮制である防衛大の学内では初めての感染者となった。
感染した学生は医療機関に入院中だが、濃厚接触者となった同部屋の学生らは隔離生活を送っている。
そうしたなか、防衛大学校執行部のコロナ禍への対応をめぐる不祥事を告発する「申立書」が、
岸信夫・防衛相および防衛監察本部に宛てて送られていた。
送付されたのは11月初旬のことで、差出人は、
防衛大学校教授(人文社会科学群国際関係学科)の等松春夫(とうまつ)氏。
「防衛大の教授が、本省のトップである防衛大臣に宛てて、
防衛大執行部の総退陣を求める書面を送るのは前代未聞のこと。
等松教授は防衛研究所や海上自衛隊幹部学校、航空自衛隊幹部学校、
統合幕僚学校でも長年にわたって講義を担当しており、2009年から防衛大教授を務めている。
神奈川県横須賀市にある「防衛大学校」は、将来の幹部自衛官を養成する教育・訓練施設には、
4学年の約2000人が敷地内の寮で学生生活を送る。
人文社会科学系の一部の学科長らはコロナ感染が広がるリスクを踏まえて、
帰校、着校の延期などを進言していたそうだが、
國分良成・学校長や幹事の原田智総・陸将に聞き入れられなかったとしている。
防衛大内では自殺未遂や賭博事件、数十人単位の退校者を出してしまった。
心配した一部の教官が、独自にメールで学生アンケートを取るなどしたことにより、
複数の自殺未遂が発生するなどの異常事態が関係者の間で知られるようになった。
しかし、その後も6月9日に開かれる予定だった全学教授会が直前になって中止になるなど、
教官たちへの説明はなさないままで、そうした防衛大執行部の不祥事を隠蔽するような対応に、
教官たちも不信を募らせていったという。
國分学校長ら執行部による説明責任の回避が、申立書の提出につながったとみられている。
「複数のメディアで防衛大の内情が報じられたことを受け、防衛大内では自殺未遂や賭博事件、
数十人単位の退校者を出してしまった状況を改善するのではなく、
報道の情報源が誰なのかという“犯人探し”に躍起となっていた。
等松教授が今回の申立書を提出するきっかけのひとつとなったのも、
7月に入って防衛大側から突然の聞き取り調査を受けたことだといいます。
等松教授は学内で名前を名乗らない2人の男性からいきなり呼び止められ、
公益通報により情報保全義務に反した嫌疑があると告げられた。嫌疑を否定する等松教授に対して、
防衛大内の会議室で約40分にわたって威圧的で執拗な尋問が行なわれたという。
防衛大内部での危機管理の問題について、責任の所在が曖昧にされたまま、
執行部に批判的な関係者に対する締め付けばかりが強くなるような状況があったというのだ。
そうしたなか10月になって、防衛大に対する防衛監察が始まった。
聞き取り調査の対象の一人となったのが等松教授だった。
「自身に対する不可解な聞き取り調査や一向に責任を取らない執行部の姿勢に対して、
義憤を感じた等松教授は、防衛監察の聞き取り調査の場で今回の申立書を提出。
ただ、監察団から“受け取る立場にない”という対応があったことから、
岸大臣らに送付するというかたちになったようだ。
等松教授は、取材に対し「大臣と監察本部に申立書を出したのは事実だが、
回答と善処の決断を待っている状況なので、詳細は差し控えたい」と述べた。