神奈川県立循環器呼吸器病センターj 呼吸器内科 医長 丹羽 崇
神奈川県のコロナ医療体制がかなりひっ迫してきていて、思わぬ変化が生まれています。
コロナに感染するのは(特に今)非常につらい思いをすると思うので警鐘として書きます。
マスコミもあまり取り上げてないので、シェアしていただいて結構です。
他地域の先生方、参考にしていただければ幸いです。
新型コロナ感染患者が急増していますが、先月あたりから当院はずっと手一杯の状況が続いています。
その中で、この緊急事態宣言発令の前あたりから明らかになってきた変化としては、救急車対応のひっ迫です。
宿泊療養できずに自宅療養している方が、状態が悪化して救急車を呼ぶという事例が急増しています
(朝から晩までひっきりなしにかかってきてます)。
病床に余裕がある時期は、自宅療養中に保健所がヒアリングをして、
危なそうな人だけではなく「不安が強い」「重症化の可能性が低いが希望があるので」という理由で
積極的に宿泊施設または病院へ誘導していましたが、
受け入れ先である宿泊施設や病院がひっ迫したことによりそれもままならず、
けっこうギリギリの状態で自宅療養している人が増えています。
結果、状態変化した場合に保健所経由ではなく、救急車を自分で呼ぶ事例が頻発しています。
しかし、それらの人のすべてが入院基準を満たすかというと、その限りではありません。
軽症だけど、「不安だから」「しんどくなったから」救急要請する、という事例があるのです。
そういった事例で、「貴院で17件目です」「ずっと断られていて」といった悲痛な声とともに
救急隊から入電しています。けれど、受け入れることが物理的に無理なものは無理なんです。
結果どうなるかというと、入院基準を満たす可能性が極めて低ければ、
救急隊は患者さんを「置いて帰ります」。
この「家に置いて帰る」というのは、今までの日本の救急医療では極めて異例の対応になります。
基本、どんなに軽傷でも救急要請されれば、受け入れ病院が見つかるまでやりきる、
というのが基本でしたからね。
なので、「不安だから」や「しんどいと感じるから」では、入院できなくなっています。
中等症や重症の方でも搬送先が非常に限られ、時間がかかります。
このまま受け入れ施設がひっ迫していくと、病院の崩壊よりも先に、救急車のキャパシティーを超えるでしょう。
救いを求める患者さんの前にいる救急隊の心情たるや・・・次に犠牲になるのは、
本当に治療が必要だけれども、入院できない、という事例ですね。
という状況ですので、いわゆる医療崩壊の中でどこが先に崩壊するかというチキンレースの中で、
神奈川は、意外かもしれませんが救急車が真っ先に限界になりそうです。
こういった事例に当てはまるのは怖いと思う方は、できる限り密を避けて、
家にウィルスを持ち込まないように心掛け、人に決してうつさないような行動をしてくださいね。
「自分は大丈夫」「俺の友達は大丈夫」「ここのクライアントは大丈夫」といった認識が感染を広げてます。
こういった心理はすべて「正常性バイアス(逃げ遅れバイアス)」といって、ただの勘違いらしいです。
(例:自然災害の映像を撮っていて、自分だけ安全と思い込んで逃げ遅れる。)
この新型コロナは、ほんとうに人間の心の隙をついてきますね・・・