1つの受精卵が2つに分かれて生まれる一卵性双生児は、同一の遺伝情報を持ち、
それぞれの身体的特徴や心的特性は、遺伝的要因よりも環境的要因によるものだと考えられてきた。
しかし、近年、一卵性双生児の間で異なる遺伝情報があることが明らかになってきた。
米アラバマ大学の研究チームは、2008年2月に発表した研究論文で、
「一卵性双生児のゲノムは同一ではない」ことを示した。
アイスランドのバイオ医薬品会社デコード・ジェネティックスの研究チームが、
一卵性双生児381組とその親、配偶者、子を対象に遺伝情報を解析した研究でも、
これを裏付ける結果が出ている。
研究チームは、2021年1月7日、遺伝学専門学術雑誌「ネイチャージェネティックス」で、
「初期発生段階で発現した平均5.2個の突然変異により、
一卵性双生児は異なる遺伝情報を持つ」との研究論文を発表。
なかでも、約10.2%にあたる39組で100個以上の突然変異があった。
その一方で、遺伝情報が同一であったのは38組で、全体の約9.9%にとどまっている。
また、一卵性双生児の約15%では、初期発生段階で発現した突然変異が、
一方の双子に顕著に多くみられ、他方にはみられなかった。
遺伝子の突然変異と関連するとみられる自閉症やその他の発達障害は、
双子の一方で発症することがある。
研究チームは、一連の研究結果をふまえ「このような表現型の差の形成において、
遺伝的要因の役割が過小評価されてきたのではないか」と考察している。