デジタル革新は、印鑑をそのまま電子印に替えるような、既存の仕組みをそのままデジタル化することではありません。
そもそもなぜ印鑑が必要だったかという原点にまで立ち返り、最新のサイバー技術を存分に活かし、
新たな社会制度の構想と統合とに取り組むべきなのです。
そうした高度な統合が生みだす新しい可能性とはなにか。ヒントは、私たち自身のからだにあります。
脳は情報システムを司っていますが、身体はその情報と物理空間とをつなぐ役割を果たしています。
情報で作られたサイバー空間と身体が属する物理空間は、別々の存在ではありません。
すなわち、物理空間とサイバー空間を対立させ分離してしまうのでなく、
私たちの身体が実現しているようになめらかに統合させるべきなのです。
この「身体性」は、デジタル革新を考えるうえで、とても重要なキーワードなのです。
東京大学総長 五神 真