政治・経済、疑問に思うこと!

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原発処理水の海洋放出「トリチウム水だから安全」の二重の欺瞞。

藤崎剛人氏が、私の疑問に答えてくれたのか。



埼玉工業大学 人間社会学部 非常勤講師

学術修士(東京大学大学院総合文化研究科)

主に20世紀ドイツを中心とする思想史研究』


福島第一原発の敷地に作られた処理水用のタンク、来年には満杯になる見通し。

「希釈すれば平気」とか「海外でもやっている」という嘘もさることながら、

既成事実をつくって反対や疑念の声を押しつぶすやり口をはこれ以上許してはならない」

4月13日、日本政府は、福島第一原発の冷却に使われていたトリチウムなどが含まれる汚染水を、

貯蔵タンクの容量が限界に達しつつあるとして、再処理したうえで海洋放出することを決定した。

政府によれば、海洋放出される処理水にはトリチウム以外の放射性核種はほとんど含まれていないという。

トリチウムは水から分離することが技術的に難しく、また体内に取り込んでも出ていきやすいので、

大きな健康被害は起こりにくいとされている。

そのため、海外での原子力発電所でも「トリチウム水」の放出は行われている。

だから問題ないのだ、と日本政府は主張している。



しかし問題となっている汚染水は、2018年、他核種処理設備ALPSでの処理を経ているにもかかわらず、

セシウム137、ストロンチウム90、ヨウ素131などトリチウム以外の放射性核種が、

検出限界値を超えて発見されたという経緯をもつ。

それまで東電は処理水内のトリチウム以外の核種は検出できないほど微量であると主張しており、

データが存在していたにもかかわらず、それを説明しなかった。

これによって政府・東電の信頼性は大きく損なわれ、海洋放出の決定は先延ばしになっていた。

福島原発事故を経て、大量の核種が紛れ込んだ福島第一原発の汚染水は、

他国で通常運転している原子力発電所から排出される処理水とはまったく性質が異なるものだ。



東電は2020年末に試験的な二次処理を行い、トリチウム以外は基準値を下回ることに成功したと発表した。

しかし、海洋放出を予定している2年後までに、再処理がトラブルなく間に合うのかはまったく不透明だ。

汚染水の海洋放出が決定された同日、経済産業省はALPS処理水の定義を変更し、

トリチウム以外の核種について、

環境放出の際の規制基準を満たす水」のみを「ALPS処理水」と呼称することを発表した。

ということは現在、基準値を超える核種が検出されている汚染水は「ALPS処理水」ではない。

また、「規制基準」をクリアする方法を、「2次処理や希釈」と表現しており、

二次処理を経ずとも希釈により基準値を下回ればそれでOKとしているとも解釈できる。

少なくともこうした先行き不透明な状況で、

「海洋放出されるのはどこの国も流しているトリチウム水だから問題ない」と説明するのは、

不正確だし、「捕らぬ狸の皮算用」でしかないだろう。



そもそも2015年、東電は漁業関係者の理解なしに処理水は海洋放出しないという約束をしていたという。

そうであるならば、今回の決定は、その約束を反故にしたかたちとなる。

既成事実をつくり、反対や疑念の声を権力的に押しつぶすやり口は、

安倍政権時代から続く自民党政治の常套手段だった

4月14日、原子力規制委員会は、柏崎刈羽原発に対し、事実上の再稼働禁止処分を下した。

中央制御室への不正侵入や、テロ対策設備の故障を1年近く放置していたことが問題視されたかたちだ。

日本の原発政策は破綻している。

そもそも、核のごみの処分を将来の技術革新に丸投げする「トイレなきマンション」として運用を進め、

その唯一の希望だった「もんじゅ」が大失敗しても誰も責任を取らないという時点で、

原発政策のモラルは崩壊しているのだ。

前首相がアンダーコントロールという嘘をつき、「トリチウム水」と称する汚染水を海に流そうとする。

マスコミは忖度して政治的責任を追求せず、政治の不正に甘く、

何か政治に怒ることがあってもすぐ忘却してしまう日本社会も共犯者かもしれない。