世界屈指の富裕国家と言われたスイスの貧困率が際立つようになった。
かつて目にすることのなかったホームレスの人々の姿が、路上に頻繁に見られるようになったのは、
2008年の世界金融危機以降だという。
現在、スイスの北西部に位置する都市で、路上のホームレスを減らす政策プログラムが実施されている。
ヨーロッパの他の都市への片道切符を無料で提供し、スイスから出て行くことを契約させるというもの。
スイス北西部、ライン川沿いに位置するバーゼル市は、人口が17万人強と国内で3番目に大きな都市だ。
この街は、近年ヨーロッパ各地からやってきたホームレスたちが急増していることが問題となっている。
地元メディア『20 Minutes』が伝えたところによると、ホームレスの人は誰でも、
一定期間スイスに戻って来ないことを約束すると書面に署名すれば、
他のヨーロッパの国に行く片道鉄道切符を無料でもらえるというシステムが導入されているという。
バーゼル司法省スポークスマンのトプラク・イェルグ氏は、
これまで、ベルギーから来たホームレス7人、ドイツから7人、イタリアから2人、
ルーマニアから14人を含む計31人が、無料片道切符の提供を受け入れたと説明。
片道切符を提供されたにもかかわらず、契約に違反しているホームレスを発見した場合、
国外追放される可能性がある。
ホームレス削減を目的として、当局がこのような政策プログラムを実施するというのは、
スイスに限ったことではない。
英メディア『Guardian』によると、2018年の調査では英国評議会は過去4年にわたり、
スイスと同様の政策プログラムを実施していたことが明らかになっている。
2015年以降、イングランドとウェールズの83の評議会では、バスや鉄道、飛行機を含む、
6810枚の片道切符がホームレスの人々に提供されたという。
こうした政策プログラムは、“ストリート・クレンジング(街の清掃)”と称されており、
一部の市民からは「行き場のないホームレスたちの管理責任を放棄している」
といった非難の声が上がっている。