英アストラゼネカの新型コロナウイルスのワクチン接種後に報告される血栓症は、
「ヘパリン」という薬を投与した後に起きるまれな病気と似ている。
そんな研究結果を、ドイツなどの研究チームが米医学誌に発表した。
チームは、ワクチンの接種後に血栓症を起こした、22~49歳の11人の症例を調べた。
11人は接種から5~16日で発症。6人が亡くなった。
このうち4人の患者の血液を調べた結果、全員から特殊な抗体が検出された。
この抗体は、血栓ができるのを防ぐ薬「ヘパリン」の副作用として知られる,
「ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)」に特徴的にみられる。
血を固めるはたらきをもつ「血小板」を活性化させ、血栓ができやすくなる。
さらに、接種後に血栓症になった24人の血液を分析。
血液成分を、健康な人の血小板とまぜたところ、HITの患者と同じように、
血小板が活性化されることを確かめた。
チームは、ワクチンに含まれる何らかの成分が、ヘパリンの場合と同じような反応を起こして、
この抗体がつくられた可能性があると指摘。
英国の医薬品・医療製品規制庁(MHRA)によると、
3月末までに英国内でこのワクチンが2020万回接種され、79例の血栓症が報告された。
このうち、19人が死亡している。若い女性が多く、その多くは脳の静脈に血栓ができていた。
接種後2週間以内の例が多いという。
血栓症に詳しい順天堂大の射場敏明教授(血栓止血学)は,
「若い人に、この場所(脳の静脈)に血栓ができることは、ふつうなら考えにくく珍しい。
今回、メカニズムの一端が報告され、ワクチンとの関連がより強まったと言える」と話した。
日本政府は同社と1億2千万回分(6千万人分)のワクチンを購入する契約を結んでいて、
同社は厚生労働省に特例承認を申請している。
国内でこのワクチンが使われる場合、「接種後にHITのようなことが起こりうると、
現場がしっかり認識しておく必要がある」と射場教授は指摘した。