オーストラリアにおける市中感染ケースで、最初に「デルタ株」感染が確認されたのは、
メルボルンだった。
メルボルンでは5月下旬に、約3ヶ月ぶりに市中感染ケースが確認され、
ゲノム解析により、変異種のひとつ、「カッパ株」であることが判明。
感染者が12人に増加した時点で、ビクトリア州首相代理が
「我々は、強力な感染力のウイルスに直面している。これは、懸念されている変異株で、
過去に例がないほど、急速に感染が広がっている」と懸念を示し、
5月27日から1週間のサーキットブレーカー・ロックダウンに踏み切った。
しかし、感染拡大傾向が収まらないことから、6月2日にロックダウンの延長を発表。
この時、ビクトリア州政府のコロナ対策医療チームは、
「これまで我々が経験してきたものとは異なり、
知らない者同士がすれ違った程度で感染しているとみられ、
これまで換気が感染リスクを軽減することはわかっていたが、
これほど感染力がある変異種には、十分でないのかもしれない。
これまで効果あったマスクもうまく機能していないようだ」
と述べ、『麻疹』並みの感染力であることを示唆した。
そして、その2日後、メルボルン西部に住む家族2人が、「デルタ株」に感染していることが確認された。
この最初の感染者の同居人も検査で陽性となり、この2人の排出するウイルスをゲノム解析した結果、
「デルタ株」に感染していることが判明。
ニューサウスウェールズ州保健省は、この感染者2人が訪れた場所のリストを公開し、
該当地域住民に、同じ場所(飲食店、スーパー、デパートなどの小売店など)を,
同日同時間帯に訪れた人は、症状の有無に関わらず検査をするよう呼び掛けた。
当局は、この2人がどこで接触したのかを綿密に調査し、
この2人が同じ日に同じショッピング・センター内のデパートにいたことを突き止めた。
そして、デパート各階に設置されているCCTV映像の提供を依頼。
この映像を分析した結果、同じ時間帯に同じフロアの同じセクションにいたことがわかったのだ。
シドニーで昨夜8時以降に判明した新規感染ケースは束の間の接触であることが明らかになった。
ニューサウスウェールズ州のブラッド・ハザード保健大臣は、
「この2人は、通りすがる状況で、10cmから恐らく50~60cm程の距離範囲にいたようだ」
と、19日の会見で述べた。
また、同日(19日)発表されたもう1件の新規感染ケースは、
このショッピング・センターを定期的に歩いて通過していた女性だという。
ショッピング・センター内のどこか特定の店で感染者と遭遇したわけではなく、
大きなショッピング・センターの建物内を歩いて通過しただけで感染した可能性が高いという。
しかし、まだ詳細は明らかになっていない。
当局は、このショッピング・センター全体を、
「感染者が訪れたことで、感染する恐れのあるスポット」に指定。
この場所を含む、感染ホットスポットとして公開されている場所の日時に訪れた人は、
症状の有無に関係なく、検査をし、当局の指示に従うよう呼びかけている。
メルボルンで見つかったデルタ株の市中感染ケースは、
ゲノム解析により、スリランカから帰国し、検疫ホテルに滞在していた感染者男性と一致した。
一方、シドニーのデルタ株は、ゲノム解析の結果、米国由来であるという。
また、シドニーで最初に感染確認された男性は、国際線クルーを送迎する、
車のドライバーをしていることから、米国路線の国際線航空会社クルーから感染した可能性が浮上。
今のところ、はっきりとした感染経路は確定していないが、
どちらのケースも「わずかな一瞬ともいえる隙」に感染しているとみられる。
ニューサウスウェールズ州政府は、今回のデルタ株クラスターで、
シドニー大都市圏での公共機関利用時のマスク着用を再び義務化。
また、屋内施設(スーパーなども含む)でも着用を強く推奨するとし、
今のところロックダウンにはなっていないが、当局は警戒を強め、規制を強化している。
デルタ株は、ワクチン接種の進んだ英国でも猛威を振るっており、
イングランド公衆衛生庁によると、新規感染のほぼ全てがデルタ株によるものに置き換わったという。
また、米国でも感染が急増しており、米国内でもデルタ株が優勢になる日は近いと、
CDC(疾病管理予防センター)のディレクターは懸念する。