光で化学反応を起こす「光触媒」を発見し、ノーベル賞候補にも名前が挙がる、
藤嶋昭・東京大特別栄誉教授(元東京理科大学長)が8月末に、
自ら育成した研究チームと共に中国の上海理工大に移籍した。
同大は今後、藤嶋教授のチームの研究を支援するプラットフォームとして、
光触媒に関連する国際的な研究所を学内に設置する計画だ。
日中の学術交流関係者によると、この研究所の新設・運営費用については、
上海市政府と同大が共同で拠出する方向で準備が進められてきた。
その規模は日本円で数十億円になる見込みだという。
藤嶋教授は、世界各国からの留学生の育成にも力を入れてきた。
そのうち3人は中国の学術界を代表する「中国科学院」の院士に選ばれた。
19年には、こうした日中間の科学技術交流への貢献から、
中国の発展に貢献した外国人専門家に授与される「中国政府友誼(ゆうぎ)賞」を受けている。
財源を出し渋る日本政府の政策により、日本の研究環境が悪化する中で、
産業競争力にも直結する、応用分野のトップ研究者らの中国移籍は、
日本からの「頭脳流出」を象徴する事例になり、さらに加速する可能性がある。