日本大学医学部付属板橋病院（東京・板橋区）の建て替え工事をめぐる事件で、
東京地検特捜部は７日、同大に２億2000万円の損害を与えたとして、
背任容疑で日大理事の井ノ口忠男容疑者（64）と、
大阪市の医療法人「錦秀会」前理事長の籔本雅巳容疑者（61）を逮捕。
日大は2019年12月、医学部付属板橋病院（東京都板橋区）の工事の設計・監理業者を選ぶ業務を、
井ノ口容疑者が取締役を務める子会社「日本大学事業部」（世田谷区）に委託した。
事業部は都内の設計事務所を選び、日大は事業部の提案通り24億4千万円で20年4月に契約。
一部の約7億3千万円を同年7月に支払った。
翌8月、医療法人グループ前理事長が、全額出資した実体のないペーパー会社に、
設計事務所から2億2千万円が送金された。
特捜部は、送金は井ノ口容疑者の指示で、任務に背いて日大に不要な支出をさせて損害を与えたとみている。
翌9月には、同グループの関連会社から、井ノ口容疑者の知人側のコンサルタント会社に6600万円の送金があった。
うち3千万円は11月に知人側の別会社に移され、知人はこのうち計2500万円を理事に手渡したことが判明。
2億2千万円の事実上の分け前として井ノ口容疑者個人も利益を得た疑いが持たれている。
井ノ口容疑者は別のルートで現金を受け取った疑いもあるという。
井ノ口理容疑者は日大の田中英寿理事長の側近で、特捜部は先月、田中理事長の自宅も含めて一斉捜索していた。
井ノ口容疑者は、アメフト部でコーチも務めたが、悪質タックル問題で、選手に口封じを図ったことが判明。
第３者委員会の調査報告書は、井ノ口容疑者を、
「理事の立場にありながら隠蔽工作を行い、真相解明を妨害した」と厳しく断じた。
これを受けて１８年７月、日大理事と事業部の役職を辞任したが、
１９年１２月に事業部取締役、昨年９月に日大理事の座に早々と復帰。
不起訴で、アメフト悪質タックル事件は無かったことになっている。
井ノ口容疑者は、田中理事長の妻が経営するちゃんこ料理店に通うなどして懇意になり、
「日本大学事業部」に田中理事長の推薦で入社。１７年に日大理事に上りつめていた。
ある職員は、井ノ口容疑者が「自分の声は理事長の声と思え」とすごんでいた姿を覚えている。
「恐怖政治がまかり通っていた。これを契機に関係者が一掃され、健全な状態に戻ってほしい」と捜査に期待した。
井ノ口容疑者は、安倍元総理とも仲が良く、ゴルフなども一緒にしていた。
蕨本容疑者は、医療法人グループ「錦秀会」（大阪市）を、父親から引き継ぎ、
前理事長籔本雅巳（61）はを、父親から医療法人「錦秀会」を引き継ぎ、
１９９５年に理事長に就任。関西を中心に、７つの病院や介護施設、専門学校、
病院関連事業などを広く展開する巨大グループへと成長させた。
東京地検特捜部の家宅捜索後、９月１７日付で理事長を辞任している。
籔本容疑者は政界にも広い人脈を持つ。安倍元総理とはゴルフや会食を重ねてきたことで知られている。
中山泰秀・前防衛副大臣など自民党議員を中心に、籔本容疑者個人や「錦秀会」から、
毎年数１０万～１００万円単位の政治献金も行われている。
安倍元総理は籔本容疑者を「籔ちゃん」と親しげに呼んでいた。
井ノ口容疑者は容疑を否認、蕨本容疑者は留保している。
‘＠異例な流れ、特異な待遇の裏には、いつも安倍元総理の名前が出てくる。
本来、多くの利益を上げることは良しとしない公益法人。
上場会社ではないので、余計に分かりづらい流れの中で、懐を潤していたのだ。
安倍元総理同様、責任をとらない田中理事長は辞任。国の助成金（税）を一時的に出すべきではない。
