――実際に政権交代が起きたら何が変わるんですか?何をしてくださるんですか?
枝野:少なくとも今までの「自助」や「自己責任」を強調する社会から、
医療や介護や保育に代表される生きていくために不可欠なサービス、
「ベーシックサービス」を誰もが安い費用、負担可能な範囲で受けられる社会へと変えていく。
その転換への第一歩を踏み出す。大きな方向の転換です。
政権交代したからといってすぐに保育所がバーっとたくさんできるわけではない。
介護サービスがガーッと数が増えるわけでもないけれども、
間違いなくどんどん小さくなっていっていた方向から、
どんどん大きくしていく方向に方向転換の第一歩を踏み出す。これが私たちのやることです。
――その分めちゃくちゃお金がかかりそうですけど、どういうところを減らしていくんですか?
枝野:キャッシュで配っているところを、ある程度は抑制できると思います。
つまり高齢者の皆さんは年金の額そのものを気にされている方もいらっしゃるけれども、
それ以上に多くの人たちが年金の範囲でちゃんとした医療が受けられるのか、
ちゃんとした介護が受けられるのかということを心配しているんですよ。
もらう年金の範囲の中で、そこそこの医療や介護が受けられるならば、
年金を増額しなくても現在の年金の額でいいという人がほとんどなんです。
例えば受け取っている年金の額に連動する費用でそうしたサービスが受けられるようなことが作られれば、
年金の額は抑制できます。こういうところが一つ大きなポイントだと思っています。
――野党がどうしても反自民、反安倍、反菅をすごく言っているイメージが強いです。
ただ文句言っているだけだと、選挙で票を入れたくないという人もいると思いますが。
枝野:最近、明確に言おうと思っているんですけど、大手メディアの責任が大きいです。
例えば先日もこの状況だから緊急事態宣言が必要だということで、ぶら下がりをしたわけですよ。
これについてきちんと説明をしてやり取りもいろいろあったあと、最後に直接関係ないけど、
桜を見る会の証人喚問をするのかということを一言聞かれました。
ここでうかつに答えると、ここだけ使われると思ったので、
「国対(国会対策委員会)に任せている」みたいなことを言ったんですけど、
そこだけ夜のニュースで切り取って使われたんですよ。
だから最近は相当ガードを固くしています。
メディアの側がこれを取り上げて伝えたいと思っていることに答えちゃいけないと。
答えてしまったらそこばっかり取り上げられるので。
野党は批判ばっかりって言われますけど、我々は批判するのも仕事です。
野党が批判しなきゃ誰が批判するんだっていうこともあるので、堂々と言わなきゃいけないところもありますが、
力を入れている話が取り上げられず、そうでない部分ばかりが取り上げられることを、
どう防ぐかというところには相当知恵を絞っています。
僕らの意識としてはメディアと戦っているみたいなところはありますね。
――最近、中道に近い人たちは票を入れる党がないと感じているのではないでしょうか。
枝野:まずリベラルとか保守とか中道とか、国民の皆さんのほとんどはそんな意識を持っていません。
そんなことを考えているのはこの業界の近くにいる人だけです。ごく一部なんです。
つまり、いい悪い別としてですよ、今の日本の民主主義って、結局、人に対する信頼なんですよ。
各選挙区における候補者、議員、この人は信用できるのか、期待できるのかという、
人に対する信頼とか期待が、特に小選挙区の投票行動のかなりの部分を占めています。
信頼される活動をしていれば、何党だろうと関係なく応援してくれるんですよ。
ここの層を広げていかないといけないんですよ。
――若い人の声を政治に届けるにはどうすればいいですか?
枝野:まずは若い人たちが声を上げなくちゃいけないですよね。
政治へのアプローチの仕方が分からないときはどうしたらいいのか。
地元の地方議員を捕まえることです。
今、我が党は国会議員151人だけど、自治体議員は1千人以上いるわけです。
全然空白のところもあるけれども、それなりにいるわけですよ。
そうすると我々とのネットワークがある地方議員もいるわけで、ここにアプローチすることでしょうね。
若い世代の最初のアプローチはネットがいいですよ。なぜかというといつでも読めるし共有できるから。
ツイッターでも「#立憲ボイス」というのを集めていますけど、
これも全部見てちゃんと統計を取って私のところに来ています。
あと、うちに声を寄せてもらうのもいいんですが、党首の私のところには山ほど声が来るわけですよ。
そうすると何か動こうと思っても中堅か若手の仲間を見つけてきてそこに振るしかないんです。
自分で動けないから。
だから本当に政治家を動かしたいならフットワークのいい中堅や若手、
そのテーマに関心を持っている議員がいいです。
例えば教育関連なら衆議院のホームページから、文部科学委員会のリストがすぐに出てきます。
彼らはそれを一番メインでやっているので、そういう人たちにとにかくメールを送ればいいんです。