シンガポールは、国民の新型コロナワクチン接種を積極的に進めた。
結果、全人口の84%が2度のワクチン接種という、多くの国がうらやむほど高い接種率を達成。
ところが、足元で新規感染者数と死者数は過去最高を記録。
シンガポールではマスク着用が義務付けられ、行動規制がなお厳しい。
追加接種も始まったが、直近の感染拡大局面における死者は、9月初めの55人から280人に増えた。
シンガポール国立大学の疾病モデリング専門家、アレックス・クック准教授は、
「これから規制措置が次第に緩和されるとともに、シンガポールはもう2回か3回、
感染拡大の波を経験するかもしれない。それまで死者数は恐らく増加し続ける。
まだ、ワクチンを打っていない高齢者が接種可能となるか、追加接種がより普及しない限りは」
と危機感を訴える。
シンガポールは、厳格な規制措置を実行し、新規感染者と死者を他国・地域よりずっと少ない数に抑え込んできた。
こうした規制は、徐々に規制を緩めて経済活動を再開させている。
徐々に国境を再開し、ワクチン接種を条件に入国者の隔離を不要とする先を10カ国余りまで拡大している。
オーストラリアとニュージーランドも同様の段階に移行。
中国は、まだそこまで踏み切っていない。
シンガポール政府が8月に一部規制を緩和した後、新規感染者数はじわじわと拡大し、
今月18日からの週は4000人近くと、昨年のピーク時の3倍に迫る水準になった。
こうした中でシンガポール政府は、医療体制への重圧を和らげる目的で、
社会距離に関する制限の一部を約1カ月間延長する方針を打ち出した。
政府は追加接種に軸足を置きつつあり、高齢者や医療従事者だけでなく、
30歳以上の一般国民までを対象にしようとしている。
日本では、「いま感染するのは持病のある人や高齢者だけ」と言ってのける人がいる。
あたかも、高齢者や持病のある人は仕方ないと見捨てるかのように。
シンガポールで起きていることは、新型コロナは社会にとって、
さまざまなリスクがまだまだ残り続けることを示唆している。
残念ながら、ワクチンは最も脆弱な人々を守ってくれない。
そして、ワクチンだけに頼るやり方は痛い目に合う可能性がある。
日本もここまで感染者数が下がれば、平常に戻ることになる。
感染対策を怠らず、できる限り、自分の身は自分で守るしかない。