豚骨ラーメンのスープを作った後に捨てられる豚骨ガラが、原発の汚染水浄化に役立つかもしれない。
日本原子力研究開発機構(本部・東海村)と東京大大学院理学系研究科の共同研究グループは、
動物の骨が持つ金属吸着性能を高める技術開発に成功したと発表。
実用化できれば、福島で使われている既存の放射性ストロンチウム吸着材に比べ、
低コストで大量製造できる利点がある。
原発事故で放出された主要な核分裂生成物のうち、放射性の金属ストロンチウムは、
人間など脊椎動物の体内に入ると骨に蓄積しやすく、内部被ばくによる発がんリスクがあることが知られる。
研究グループは今回、豚骨ガラを高温高圧で加熱して重曹(炭酸水素ナトリウム)水溶液につけ込むことで、
炭酸を含むアパタイト分子が新たに生成することを発見。
重曹の濃度を高めるにつれ、より炭酸量の多いアパタイトが作られた。
この「高炭酸含有アパタイト」をストロンチウム水溶液に入れてかき混ぜたところ、
三分以内に99%以上のストロンチウムを吸着。
さらに、アパタイト表面の挙動を分析した結果、炭酸イオンが持つマイナスの電荷が、
プラスに荷電したストロンチウムイオンを引き付け、吸着性能に大きく寄与していることが明らかに。
重曹につけたアパタイトは分子からカルシウムが外れ、
非常にストロンチウムを取り込みやすい状態になることも突き止めた。
高炭酸含有アパタイトは、鉱山や工場から排出され公害の原因になる、
カドミウムや鉛といった有害金属に対しても、優れた吸着性能を示した。
研究グループは「低コストで量産できる技術の開発により、廃棄物処理と環境浄化に新たな道筋を示した」とアピール。
リチウムなどの有用金属を環境中から回収するための吸着材としても、応用が期待できるとしている。
既に、複数の企業と実用化に向けた協議を進めているという。
豚骨ガラは、原子力機構によると、世界で年約75億トン発生している。