国連の専門機関、世界気象機関(WMO)は14日、ロシア北東部シベリアの北極圏で、
2020年6月、極地では観測史上最も高温の38度を記録したことを認定。
その上で、気候変動について改めて警鐘を鳴らす記録と位置づけた。
WMOが「北極圏よりも地中海にふさわしい」とする気温は、
昨年6月20日、ロシア東部の町ベルホヤンスクで観測された。
WMOによると、当時はシベリア一帯から北極圏まで広がる熱波が到来中だった。
これにより、シベリアの北極圏の平均気温は通常よりも10度上がり、
地球規模での気温上昇や山火事、海氷の喪失につながったという。
WMOのペッテリ・ターラス事務局長は声明で、
「この新たな記録は私たちの抱える気候の変化について警鐘を鳴らしている」と訴えた。
ベルホヤンスクは世界の「寒極」とも呼ばれ、1892年には氷点下67.7度の最低気温が報告された。
6月の最高気温の平均は20度だ。
北極圏は過去に一度も高温を経験してこなかった分けではない。
内陸部では夏に気温が急上昇することがある。
米国アラスカ州フォートユーコンでは、1915年に初めて37.7℃を記録。
ベルホヤンスクでも、1988年に37.3℃という日があった。
欧州委員会(EC)のコペルニクス気候変動サービス(C3S)によると、
シベリアの気温は月ごと、年ごとに大きく変化するのが特徴だが、
昨年から長期にわたり、平均を大幅に上回る状況が続いている。
山火事の増加も目立ち、2020年6月22日の衛星画像では北極圏付近に複数の山火事が確認された。
こうした中、世界の科学者たちがもっとも懸念を示しているのは、永久凍土の融解が止まらなくなることだ。
新型コロナによるパンデミックは、人類が免疫を持たない未知のウイルスによる感染爆発だが、
永久凍土にも数多くの未知のウイルスが眠っているとみられている。
実際にフランスのウイルス学者のチームは、溶け始めた永久凍土から、
「モリウイルス」という新種のウイルスを発見した。
生物の細胞に入ると12時間で1000倍に増殖し、その高い増殖能力に脅威を感じたという。
溶けた永久凍土から未知のウイルスが拡散されることを恐れている。
もう一つは、数万年にわたって溶けずに永久凍土に封じ込められていた、
メタンガスが大気中に放出される。
メタンはCO2の25倍の温室効果を持つガスで、その大量放出は温暖化をより一層加速させ、
手のつけられない暴走状態に陥れる危険性がある。
気温がさらに上昇していくと、温暖化の進行が後戻りできないティッピングポイント(臨界点)を超え、
ドミノだおしのように暴走していくリスクが高まるという。
地球の防衛ラインと言われる+1.5℃に抑えることは、パリ協定の目標だが、
このままでは早ければ2030年にも突破しそうな勢いだと分析。
すでに気温が1℃上昇している現在でも、多くの異常気象や災害に見舞われている。
4℃上昇だと、とんでもないことになる。危機を避けるには、上昇を1.5℃に抑えるしかない。
気温上昇を1.5℃に抑えるためには、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を、
植林などで人為的に吸収する量を差し引いて、
実質ゼロにする“カーボーンニュートラル”という状態にしなければならない。
日本政府は去年10月、2050年のカーボンニュートラルを宣言をしたが、
その背景には地球温暖化がここまで悪化し、追い込まれている厳しい現実がある。
しかし、カーボンニュートラルへの道は簡単ではない。
科学者たちは「2030年までに温室効果ガスの排出量を半減させる必要がある」と警告。
産業システムそのものの変革が急務ということだ。
そのためには、“脱炭素”に取り組む企業が得をする仕組みに変えることだが、
そのためにも、私たち消費者の行動変容が求められる。
世界がざわついているのは、決してポーズでは無いということを認識すべきだ。