ものづくりの街、大阪府の東大阪市。
12月13日、自民党の茂木敏充幹事長と市内の経営者6人が、テーブルを囲んで話をした。
茂木幹事長は、経営者らに「下町ボブスレーのようにヨコのつながりが大切だ」と話した。
「下町ボブスレー」とは、東京都大田区の町工場を中心に技術を結集してボブスレーをつくり、
冬の五輪に走らせようというプロジェクトのことだ。
2011年に始まったこのプロジェクトは“日本スゴイ”の証左の一つとして自民党政権がもてはやしてきた。
しかし、14年のソチ、18年の平昌。どこの代表チームも、下町ボブスレーのそりを使わなかった。
来年の北京で、巻き返しを目指している……。あきらめずにチャレンジすることは、素晴らしい。
けれど、10年たって成功するかどうか分からないプロジェクトを見習え、と言ったのである。
そもそも、東大阪の名誉をかけて指摘しておきたい。
町工場があつまって力を発揮した先駆者は、
09年に打ち上げを成功させている人工衛星「まいど1号」である。
これは、東大阪の町工場が集まったプロジェクトだった。
下町ボブスレーは、この成功に刺激を受けて始まったのである。
茂木幹事長は、さらに語る。
「これまで見たことないものを生み出してほしい」
「中国の深圳なんかは睡眠時間4時間で新しいものを生み出している。そういう情熱も必要だ」
情熱なしでものづくりをしている町工場なんて、ない。経営者側の意見はこうだ。
「大手企業とのピラミッドの中でやってきた。そんな中で、ピラミッドからの脱却、
イノベーション(技術革新)を起こせ、新しいものを、と言われても簡単な話ではない」
そもそも、ピラミッドを町工場が下から支えてきたから自動車ができるのであり、家電ができる。
私たちの生活は下請け仕事が支えてくれている。まずは町工場に感謝するのが筋、である。
30分ほどの対話後、茂木幹事長は記者団に言った。
「東大阪の企業は、元気がある。大阪、日本の未来は明るいと思った」
そして、大阪を去った。
このことを言うのを忘れなかった。
「賃上げを積極的にすすめる中小企業については、40%の法人税減税という思い切った措置を取っている」
岸田総理の肝いりで12月に拡充が決まった「賃上げ税制」のことである。
‘@茂木幹事長の発言は、休みをとれという政府の政策と真逆の発言だ。
しかし本音でもある。
休んでいたら負けてしまう。
これは ワタミの渡邉 美樹 社長だけではなく、多くの成功者が思っていることだ。
だから、政府の政策は掛け声の割に進まないのは当然のことだ。
しかし、成果主義を推し進める政府の幹事長が、
申し訳ないが、成果が上がらないものを持ち出して熱弁を披露するとは、
できる人だとの噂だが、懐疑的だ。話に矛盾が多すぎる。
多分、記憶力と口が上手いのだろう。
政府の中枢にいる茂木大臣の「睡眠時間4時間で新しいものを生み出している。そういう情熱も必要だ」
との言葉は、思っている以上に、深く、重い。