キーウの北にある人口750人ほどの小さな村デミディフでは、住民が洪水の後処理に追われている。
ふつうなら不幸な出来事となるはずだが、彼らはこれ以上ないほど喜んでいる。
「私たちはキーウを救ったのよ!」
退職者のアントニーナ・コストゥチェンコは、誇らしげにそう言う。
彼女の居間は1.5m近くも浸水し、カビ臭い匂いが漂っている。
浸水した道路で絨毯を運ぶ住民。
復旧には数週間から数ヵ月かかるとみられている。
これは戦術的な勝利だった。
ウクライナ軍が近くの水力発電用ダムを開いて田園地帯に水を放流し、村は洪水に見舞われた。
そうしてロシアの戦車が入って来られないようにした。
その代償として、薄暗い緑色の水が村を飲み込んだ。
ロシア軍を不利な地形に追いやるため、ロシアによる侵攻初期から、
ウクライナ人は躊躇せずこうした破壊行為をしてきた。
キーウ周辺の橋の爆破は、とくに入念に計画されていた。
彼らは、ロシアの装甲車が横切るときに橋を爆破し、車両が川に落ちる映像を公開。