ドミートリー・グルホフスキー「俺たちの代弁をさせてはいけない」
「なぜロシア政府はこの戦争を『特殊軍事作戦』と呼べと俺たちに命じたのか。
なぜならロシアでは、誰も戦争などしたくなかったからだ。
みんな戦争を恐れていたからだ。
なぜなら戦争とは生きた人間が家から出ていき、棺となって戻ってくるものだからだ。
なぜなら戦争とは、咲き誇る街があった場所を煙のたちのぼる廃墟に変えてしまうものだからだ」
「いまメディアのプロパガンダはすべての国民の額に〈Z〉の烙印を押そうと牙を剥き出しにしている。
この同胞殺しの戦争の責任を、ヨーロッパの平和を乱した責任を、悪夢のような過去への逆戻りの責任を、
プーチンとその体制から国民に転化するために。
市民を盾にして、その後ろに隠れるために。
戦争責任をすべての国民に押しつけるため、政府は国民に支持されているかのように見せかけている。
ロシア全土の80の地区で行政機関に〈Z〉の旗をつけた車を走らせている。
カザンの小児病棟の死にそうな子供たちを集めて雪のなかで〈Z〉の人文字を作らせ、
それを空から撮影している」
「けれども俺たちは、決して忘れてはならない。
〈Z〉を支持するとは、ウクライナの平和な住宅に爆弾を落とし銃撃をするのを支持することなのだと。
幾多の学校を爆撃したことを、200万人もの人が家を失い避難せざるをえなかったことを、
兄弟のように仲の良かった人々の、2国の、つながりを、永久に絶ってしまったことを。
ウクライナの一般市民の血と、「演習」と聞かされて地獄に派遣されたロシア兵の血が、
責任として俺たち皆に塗りたくられていく。
これは俺たちの戦争じゃない。
それを忘れてはいけない。
声に出さなくてはいけない。
『あいつらに俺たちの代弁をさせてはいけない』