洋上風力の入札、異例のルール変更。
洋上風力の入札が始まってからルールを変えた再エネ議連。
経産省と国交省が進めていた洋上風力発電をめぐって、いったん決まった公募入札のルールが、
1回目の入札結果が発表されてから変更される異例の事態になり、その結果に業界は驚いた。
2021年12月下旬に公表された秋田県、千葉県の3海域(第1ラウンド)の公募入札結果だ。
この入札では国内外からそうそうたる企業が参加。
どこの海域もほとんど点差がつかない接戦が予想された。
だが、結果は三菱商事などで構成するコンソーシアムの圧勝だった。
他事業者に圧倒的な大差をつけて3海域を総取りしたのだ。
事前の予想では早くから参入を表明していたレノバや日本風力開発などが落札するとみられていたが、
結果は三菱商事グループが11.99円~16.49円/kWhと他社に5円以上の差をつけ、3件すべてを落札。
これでレノバの株価は6000円台から1200円台に暴落。
再エネ議連の柴山昌彦会長は「毎週、議連の会合に役人や業者を呼んで、
入札の問題点等について聞き取りを行ってきました」と認めた。
再エネ議連が毎週聞き取りを行った結果、5月に入札ルールが変更され、
6月に行われる予定だった第2回の入札は来年3月に延期され、審査方法も変更された。
従来の審査基準は売電価格の安さを重視してきたが、
新たな基準は運転開始時期の早さなど「計画の迅速性」に重点を置く。
1社による公募案件の独占を制限する項目も盛り込まれる方向だ。
三菱商事側は3海域の運転開始時期を28~30年と想定している。
より早い時期を示した企業もあったため、三菱商事の独占に「問題がある」と不満が続出した。
こうした業界の声に押され、経産省などの審議会が今年3月から見直し作業に着手。
新たな審査基準の公表が間近に迫った現在でも、業界内の意見はまとまっていないのが実情だ。
「国内の洋上風力事業はまだ黎明(れいめい)期。基準の見直しは当然だ」。
経産省関係者はこう説明する。ただ、短期間で審査基準が変更されることは極めて異例だ。
審査基準の見直し作業を受け、経産省は6月に予定していた公募開始の延期を決めた。
開始は年末にずれ込む見込みだ。
ある業界関係者は「早期稼働を促すはずの制度見直しの影響で、運転開始が遅れるのは本末転倒だ」と皮肉る。
こうした一連の工作を仕切ったのは、レノバ会長の千本倖生氏だという。
氏はNTT出身だが、第二電電やPHSやイーモバイルなどで政界工作をやった「政商」である。
三菱商事が12円で落札した洋上風力が、来年レノバに20円で落札されたら、
これは再エネ賦課金に反映され、最終的には数兆円の国民負担になる。
さらに問題なのは、再エネ議連事務局長の秋本真利議員が風力発電事業者5社から、
3年間で1800万円の政治献金を受け取っていたことだ。
献金した業者の意を受けて入札ルール変更に動いたとすれば、刑事事件になる可能性もある。
氏はこの週刊新潮の記事が出てから、雲隠れしたままだ。
電力危機で高くて不安定な再エネが批判を浴びているとき、
この問題を「エネ庁の売り込み」とののしる河野太郎議員。
河野議員は昔ながらの利権政治家から抜け切れていないようだ。
この入札ルールは、7月にパブリックコメントにかけられる予定なので、国民が監視しないと、
再エネ賦課金はさらに膨張し、国民負担は増える一方だ。
日本の洋上風力市場の安定性、公正さに疑念を抱かれず、
機運が高まってきた洋上風力市場にとってブレーキとなりかねない。
官民を挙げて急速に推進してきた洋上風力だが、ここにきて雲行きが怪しくなりつつある。