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山上容疑者、他責的傾向。

自分を例外者扱い。


(片田珠美/精神科医



安倍晋三元首相が奈良市参院選の街頭演説中に銃撃され、死亡した。

現行犯逮捕された41歳で無職の山上徹也容疑者は強い不満を抱え、

絶望感にさいなまれていたローンウルフ(一匹狼)で、復讐願望を募らせたあげく凶行に及んだように見える。

しかも、山上容疑者は「とにかく殺そうと思って、遊説先をつけ回していた」と供述しており、

実際に手製の銃を持参し、複数の演説会場を訪れていたようだ。

これだけ激しい殺意を持って安倍氏を狙ったのは一体なぜなのか。

現時点で報道されている事実から、次の3つの理由が考えられる。

1)恨みによって復讐願望を正当化

2)強い他責的傾向

3)<例外者>特有の特権意識

まず、山上容疑者は特定の宗教団体の名前を挙げて「母親が信者で、多額の寄付をして破産し、

絶対成敗しないといけないと恨んでいた。安倍氏が団体とつながりがあると思って狙った」と供述しているという。

したがって、この宗教団体に対して山上容疑者が相当強い恨みを抱いていたことがうかがえる。

山上容疑者がこの宗教団体に恨みを募らせたとしても不思議ではない。

問題は、恨みが強いと、復讐願望を抱き、しかもそれを正当化することだ。

山上容疑者が「宗教団体のせいで家庭が崩壊し、その結果自分は不利益をこうむり、

大変な目に遭ったのだから、恨みを晴らすために復讐しても許されるはず」と正当化した可能性は十分考えられる。

だからこそ、「団体のトップを狙うつもりだった」と供述しているのであり、

トップとの接触が難しかったから、矛先を向け変えて安倍氏を銃撃したのだろう。

山上容疑者が恨みと復讐願望を募らせたのは理解できなくもないが、母親が自己破産したのは20年前である。

その後、自分の力で窮地を打開することもできたはずなのに、彼の人生はあまりうまくいかなかったようだ。

職を転々としたり、職場でトラブルを起こしたりするのは、

母親が宗教にのめり込んで自己破産したことと直接関係があるのだろうかと疑問を抱かずにはいられない。



それでも、山上容疑者が自分の人生がうまくいかないのは、

母親が入信した宗教団体のせいだと思い込んでいたとすれば、

何でも社会や特定の集団のせいにする他責的傾向が強いといわざるをえない。

このように他責的傾向が強いのは、無差別殺人犯にも認められる特徴である。

山上容疑者には同情すべき点もないわけではない。

幼い頃に父親を亡くし、経済的に苦しい一家だったのではないかという印象を受ける。

もしかしたら、そのせいで大学進学を断念、あるいは大学中退を決意しなければならない事情もあったのかもしれない。

 こういう家庭環境で育った人のなかには、

「不公正に不利益をこうむったのだから、自分には特権が与えられてしかるべきだ」と思い込み、

自分には「例外」を要求する権利があるという思いが確信にまで強まっているタイプが存在する。

このようなタイプをフロイトは<例外者>と呼んだ。

この手の願望は、誰の心の奥底にも程度の差はあれ潜んでいるかもしれない。

しかし、そういう願望を抱いても、名家の御曹司か大金持ち、

よほどの美貌か図抜けた才能の持ち主でもない限り、許されるわけがない。

そこで、自分自身の願望を正当化するための理由が必要になる。

それを何に求めるかというと、ほとんどの場合自分が味わった体験や苦悩である。

<例外者>は、自分には責任のないことで「もう十分に苦しんできたし、不自由な思いをしてきた」と感じ、

「不公正に不利益をこうむったのだから、自分には特権が与えられてしかるべきだ」と考える。



何を「不公正」と感じるかは人それぞれである。容姿に恵まれなかった、貧困家庭に生まれた、

病気になった、理不尽な仕打ちを受けた・・・など、さまざまだ。

本人が不利益をこうむったと感じ、運命を恨む権利があると考えれば、

それが自分は<例外者>だと思う口実になる。

ときには、「あらゆる損害賠償を求める権利」を自分は持っているのだから、

普通の人が遠慮するようなことでも実行してもいいと自己正当化する。

 こうした傾向が山上容疑者にもあるように見受けられる。

たとえば、2020年10月から働いていた京都府内の工場で、採用から半年ほど過ぎた頃から、

仕事の手順を守らないことが目立つようになったというエピソードだ。

この工場の男性責任者は「自己中心的でわがままな性格が出てきた」と話しているが、

実際今年3月には同僚から手順違反を指摘されて激しい口論になり、

山上容疑者は「そしたらお前がやれや!」と叫んだらしい。

このエピソードから見て取れるのは、本来守るべき仕事の手順であっても、

自分だけはやらなくても許されるという思い込みだ。

このように例外的な特権を要求することを山上容疑者は正当化しているように見え、

<例外者>という印象を受ける。

こうした正当化からは、「裏返しの特権意識」とでも呼ぶべきものが芽生えやすい。

これは、普通の人なら遠慮するようなこと、あるいは通常はばかられるようなことでも、

実行する権利があるという思い込みにしばしばつながる。

その結果、暴走して今回の銃撃事件を起こしたのかもしれない。

(文=片田珠美/精神科医



‘@救えないな。

精神科の先生だから、いろいろと理屈をつけるのだろうが、

山上容疑者が犯行を正当化した供述は一言も出ていない。

恨みを晴らすのは正当化しなくても憎しみだけで十分だ。

権利とか義務などではなく、強い憎しみだけで十分だ。

その憎しみが殺害という方向に向かうのは、もちろん狂気だが、あり得ることだ。

肩が触れただけでも、100円の為でも人を殺す人間がいる。

正当化うんぬんよりも、その人間の中に潜む狂気が爆発する。

もちろん、相模原市の障害者施設殺害事件の元職員植松聖のように、正当化する者もいる。

山上容疑者は確実に殺す方法を、ある意味冷静に選んだ。

だから、最初は爆弾を使用するつもりだったが、巻き添えを避け銃にした。

それも、散弾銃のようなもので2回発射できる拳銃を自作した。

そして、何度か試し撃ちもして、銃の能力を確かめた。

同じ境遇で普通に生活している人もいるから、個人の責任と言えばそういうことになるのかも知れない。

だが、貧しい地域に犯罪が多いのは世界的事実でもある。

日本でも、学歴の格差が言われている。

生涯年収の格差が広がるのも事実だ。

経験のない人にはその苦しさは理解できないのかも知れない。

母親がいるのに、母親は子供を捨てて宗教に邁進。

今の時代、母親が存在するのに食べるものが無く、おじいちゃんに助けを求めた。

そんな悲惨な家庭が、想像もつかないが、社会は助けられなかったのか。

働いていた工場の話も、いろんな記事が散見されるが、工場の責任者によると、

山上疑者は今年5月、勤務していた京都府内の工場を辞めた。

2020年10月から働き、フォークリフトで倉庫の荷物を運ぶ「リフトマン」と呼ばれる仕事をしていたという。

工場の責任者は、「フォークリフトの免許保有の条件で派遣会社に人材を要請し、

そこで紹介され働くことになりました。日勤なので8時~17時まで、契約期間は3か月ごとでした。

今年に入るまで特に問題もなく……少なくとも現場でコントロールできていましたので、

契約は更新していたというのが現状です。



ただ今年に入ってからは少し様子が変わって、言葉が荒くなったようです。

今年の1月に、出入りしているトラックのドライバーと積み荷の仕方で口論となり揉めることがありました。

ドライバーさんからは『担当を替えてくれ』とクレームが入ったので、替えました。

ただ契約の更新をストップするほどの事案ではないというのが担当部署の判断でした」

しかしその直後、彼は再びトラブルを起こした。

「3月末に、こちらの指示に対して言うことを聞かないことがあり、

現場の先輩に『お前がやれや!』と暴言を吐くことがありました。

注意をしましたが、それを機に休みがちになってしまった。

そこで次の契約について課内で話し合っている最中に、派遣会社から、

本人が『体調がすぐれないので辞めたい』と言っていると連絡がきました。

ただウチとしても急に働き手がいなくなると困るので、

『もう少しいてくれないか』と辞める時期について交渉しましたが、意志は固く、

本人都合で辞めることになりました。

有給(休暇の)消化もあり4月の後半からは出勤していません」

「ほとんどの従業員が車で通勤していますし、帰宅してから出直すというのも大変ですから、

彼に限らず帰りに飲食を共にするのは少ないようです。

コロナ禍もあり、昼食も一人で食べている人間も多いですし、

パーソナルスペースということで車の中で食事をしたり休んだりする者もいます。」

(NEWSポストセブン)



今出ている情報とは多少違うようだ。

最初はとても真面目に働いていたが、ある日から、そのある日というのは。

安倍氏は昨年9月12日、韓鶴子氏が創設したNGOである天宙平和連合(UPF)の集会に、

ビデオメッセージを寄せた。

「今日に至るまでUPFとともに世界各地の紛争の解決、

とりわけ朝鮮半島の平和的統一に向けて努力されてきた韓鶴子総裁をはじめ、皆さまに敬意を表します」

その日辺りから山上容疑者に変化が現れた。

安倍氏の祖父・岸信介元総理が文鮮明氏と親密だったという点においては、

金正恩氏と旧統一教会との関係と背景は似通っている。

金日成氏の孫である金正恩総書記は、文氏の命日にメッセージを送っている。

2015年8月30日のメッセージで、

「世界平和連合の前総裁であった文鮮明先生の死去3年に際して、

韓鶴子総裁と遺族に深甚なる哀悼の意を表す。

文鮮明先生は、民族の和解と団結、国の統一と世界平和のために多くの努力を傾けた。

わたしは、韓鶴子総裁と遺族が文鮮明先生の遺志を引き続き継いでいくことを願う。」



統一教会は以前と比べ信者が減り、資金力も当時には及ばないとされるが、

日本が主な金づるで、政府の中枢にも食い込んでいるので安泰でもあった。

山上容疑者は戦っていたのではなかろうか。

自分の不幸を恨みながらも、生きるすべを。

山上容疑者は母の破産後、自死で「兄妹に自分の死亡保険金を」と考えた。

根っからの悪とはとても思えない。

最後の一線は超えてはいけないと、日々葛藤していたのだ。

だが、切羽詰まれば詰まるほど、恨みは増幅していった。

そして、その、トリガーを引く出来事が起きてしまった。

ひとつ、疑問に思うことがある。

前日に奈良の教団が入るビルに試し撃ちをしている。

そのことを教団や近隣の人は警察に届けなかったのか。

もし届けられていたとしたら、奈良県警安倍氏の警備を厳重にすべきだった。

していた可能性がある。。

届けなかったとしたら、なぜ、届け出なかったのか。

銃弾が撃ち込まれた1Fは一般企業のようだ。

2Fから4Fに『統一教会』が入っている。

片田氏は、自分がいかに不幸だったか、どれだけ苦労したかを強調して、

自己正当化しようとする傾向が<例外者>には認められる。

だが、世間では、<例外者>の要求する特権が認められるわけではない。

また、義務が免除されるわけでもない。

それを肝に銘じることが、個々人の幸せにつながるのではないだろうかと突き放している。

救えない。