水素を燃料とする世界初の旅客船「ハイドロびんご」が10月下旬、東京湾を初めて航行し、
東京都の小池百合子知事が試乗視察した。
船を開発した企業は二酸化炭素(CO2)の排出量が大幅に少ない環境性能や乗り心地をアピール。
小池知事は環境政策に前向きな都の姿勢を強調。
船は水素と軽油(ディーゼル)の混成物を燃料とする。
船を開発した、広島県尾道市に本社を置く「ツネイシクラフト&ファシリティーズ」(以下ツネイシ社)によると、
水素と軽油の混焼エンジンを搭載した客船は世界初だという。
軽油のみで航行する同型の船に比べCO2排出量を約50%低減できるという。
船の〝出力は、通常の航行速度の10ノット(時速約18・5キロ)程度から25ノット(同約46・3キロ)程度。
大揺れすることなくスムーズに航行できることをアピールした。
一方、実用化や普及に向けた課題は少なくない。水素燃料を供給するシステムが確立していない。
開発担当者は、船への燃料供給は水素ボンベのユニットを積み込む仕組みだが、
東京湾周辺では、船舶向けに水素燃料を充塡できるシステムがまだ整っていないという。
小池知事は、水素供給のインフラ整備については、都内に自動車向けの水素ステーションを22カ所に設置。
臨海部の晴海地区に、水素を燃料とする街区の建設を進めていることを紹介し、水素社会の進展を強調。
「とてもスピード感がある。水素で船が走ることを体感できた」と笑顔を見せた。
その上で、「脱炭素に対する筋道を明確にしていかなければならない待ったなしの状況。
そのカギを握るのが水素社会の構築だ」と意気込みを語った。