「30年も生活水準を向上させられない政党に、なぜ日本の有権者は投票し続ける…?」
日本は未来だった、しかし今では過去にとらわれている。
ルーパート・ウィングフィールド=ヘイズ、BBC東京特派員
BBCの東京特派員として着任しあれから10年たち、離任の準備をする中でも、この現象は同じだった。
この国の経済は世界第3位の規模だ。平和で、豊かで、平均寿命は世界最長。
殺人事件の発生率は世界最低。
政治的対立は少なく、パスポートは強力で、新幹線という世界最高の素晴らしい高速鉄道網を持っている。
アメリカとヨーロッパはかつて、強力な日本経済の台頭を恐れていた。現在、中国の経済力の成長を恐れているように。
しかし、世界が予想した日本は結局のところ、出現しなかった。
1980年代後半に、日本国民はアメリカ国民よりも裕福だった。しかし今では、その収入はイギリス国民より少ない。
日本はもう何十年も、経済の低迷に苦しんできた。
当時の香港と台北がアジアのやかましい10代の若者だったとするなら、日本はアジアの大人だった。
確かに東京はコンクリート・ジャングルだったが、美しく手入れの行き届いたコンクリート・ジャングルだった。
ニューヨークからシドニーに至るまで、野心的な親は子供たちに「日本語を勉強して」と力説していた。
自分が中国語を選んだのは間違いだったのか、私もそう思ったことがある。
バブルは1991年にはじけた。東京の市場では株価と不動産価格が暴落し、いまだに回復していない。
日本のスマートな新幹線や、トヨタ自動車の驚異的な「ジャストインタイム」生産方式を思えば、
この国が効率性のお手本のような場所だと思ったとしても仕方がない。しかし、実態は違う。
むしろ、この国の官僚主義は時に恐ろしいほどだし、巨額の公金があやしい活動に注ぎ込まれている。
私が日本で自動車運転免許を更新したとき、「安全」講習は、過去5年間で何かしらの交通違反をした全員に義務付けられている。
「講習」は10分後に始まると説明した。しかも、2時間かかると!
講習の内容を理解する必要さえない。私は内容のほとんどがわからなかったし、
2時間目に入ると受講者の何人かは居眠りを始めた。
私は退屈で、不満だらけになった。
「あれはいったい何が目的なの? あれは、罰なんだよね?」
オフィスに戻り、日本人の同僚にこう尋ねると、「そうじゃないよ」と彼女は笑った。
「あれは、定年退職した交通警官の働き口を作るためなの」
日本では今でも日本であって、アメリカの複製ではない。そういう感じがする。
だからこそ世界は、パウダースノーからファッションまで、日本のいろいろなものが大好きなのだ。
東京には素晴らしいことこの上ないレストランがたくさんある。
日本はまぎれもなく、ソフトパワーの超大国だ。
日本は、古い社会のあり方を手放すことなく、現代社会への変貌を成功させた国だと、よく言われる。
これはある程度、本当だ。しかし私は、日本の現代性は表面的なものに過ぎないと思う。
無理やり開国させられてから150年。日本はいまだに、外の世界に対して疑心暗鬼で、恐れてさえいる。
消滅の危険があるとされる村に行った。
住民60人のうち、10代はたった1人。子供はいなかった。
「自分たちがいなくなったら、だれが墓の世話をするんだ」。高齢男性の1人はこう嘆いた。
この村が死に絶えるなど、まったくあり得ないばかげたことに思えた。
絵葉書にしたいようなたんぼや、豊かな森林におおわれた丘に囲まれた、美しい場所だ。
しかも東京は車で2時間弱という近さなのに。
「ここはこんなに美しいのだから」と、私はお年寄りたちに言った。
「ここに住みたいという人は大勢いるはずです。たとえば、私が家族を連れてここに住んだら、どう思いますか」。
会議場はしんと静まり返った。やがて1人が咳ばらいをしてから、不安そうな表情で口を開いた。
「それには、私たちの暮らし方を学んでもらわないと。簡単なことじゃない」
この村は消滅へと向かっていた。
それでも、「よそもの」に侵入されるかと思うと、なぜかその方がこの人たちには受け入れがたいのだった。
出生率が低下しているのに移民受け入れを拒否する国がどうなるか知りたいなら、まずは日本を見てみるといい。
実質賃金はもう30年間、上がっていない。韓国や台湾の人たちの収入はすでに日本に追いつき、追い越している。
それでも、日本は変わりそうにない。原因の一部は、権力のレバーを誰が握るのか決める、硬直化した仕組みにある。
「いいですか、日本の仕組みについて、この点を理解する必要がある」。とある高名な学者が、私にこう言った。
「武士は1868年に刀を手放し、髷(まげ)を落とし、西洋の服を着て、霞ケ関の役所にぞろぞろと入っていった。
そして、今でもそこに居座っている」
第2次世界大戦において、日本は加害者ではなく被害者だったのだと、この支配層は信じている。
たとえば、殺害された安倍晋三元首相は元外相の息子で、岸信介元首相の孫だった。
岸氏は戦時下に閣僚を務め、戦犯容疑者としてアメリカに逮捕された。
それでも絞首刑は免れ、1950年代半ばに自由民主党の結党に参加した。
この自由民主党がそれ以来、日本を支配し続けている。
それなのにもう30年も生活水準を向上させられずにいる政党に、なぜ日本の有権者は繰り返し投票し続けるのか、
そこを不思議に思うのは、当然のことだ。
圧倒的に男性中心のこの国の支配層は、日本は特別だという確信とナショナリズムに彩られている。
日本の経営者に占める女性の割合はわずか13%で、女性の国会議員は10%に満たない。
この国で10年過ごして、私は日本のあり方に慣れたし、日本がそうそう変わらないだろうという事実も受け入れるようになった。
確かに、私は日本の未来を心配している。そして日本の未来は、私たち全員にとって教訓となるだろう。
日本は次第に、存在感のない存在へと色あせていくのだろうか。それとも日本は自分を作り直すのか。
新たに繁栄するには、日本は変化を受け入れなくてはならない。私の頭はそう言っている。
しかし、日本をこれほど特別な場所にしているものをこの国が失うのかと思うと、心は痛む。
‘@答えは、そこそこ食べて行けるから。
声を挙げると変な人と思われるような社会になっている。
外国人が気付いていることを日本人が気付かない。
いまの日本はシャープやラオックスだということに気付いていない。
気付いた時には遅く取り返しのつかないことになる。
いま現実に日本はどんどん落ちている。
長年たまった膿は外から買われ改革しないと変わらないのか。