NPO法人「難病患者支援の会」(東京)が仲介した、途上国での生体腎移植で、
臓器売買が行われた疑いがある問題。
移植の仲介を依頼して手術を受けられなかった神奈川県内の患者男性(58)がNPOを相手取り、
移植費用の返還と損害賠償を合わせて約3000万円の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こした。
来月1日に第1回口頭弁論が開かれる予定。
訴状によると、患者男性は2021年6月、腎機能が急速に低下する難病と診断され、週3回の人工透析治療を開始。
臓器あっせん機関の日本臓器移植ネットワークに移植希望の登録をしようとしたが、
関係者から「腎移植は平均17年待ち」と説明され、海外で移植を受けられないか検討するようになった。
男性はインターネットでNPOの活動を知り、同8月に実質代表者(62)(現・理事長)と会った。
「費用は1800万円前後。病院またはNPOの責任で手術が行えない場合は全額を返金する」
「合法的な移植手術で、全く心配はない」などと説明を受け、手術を決意。
NPOの口座に移植費用として計約1706万円を振り込んだ。
同11月、男性はNPOの案内で中央アジア・キルギスに渡ったが、
NPOから「医師の都合で手術が延期になった」と説明され、手術を受けないまま同月中に帰国。
男性はその後、別の国での移植を希望。昨年7月、NPOに追加で約135万円を支払った。
だが翌8月、前年のキルギスでの腎移植は、経済的に困難を抱えるウクライナ人がドナーで、
臓器売買が行われた疑いがあることを読売新聞が報道。
男性は報道内容を知ってNPOを通じた海外移植をやめ、費用の返還を求めたが、NPOは応じなかったという。
男性は読売新聞の取材に「臓器売買の疑いがあると分かっていたら、移植の仲介を依頼しなかった」としている。
NPOを巡る問題で、患者による民事訴訟の提起が明らかになるのは初めて。
NPOの理事長は「個別の訴訟の話はできないが、不法行為はしていない」と話している。