国の天然記念物に指定されている奈良公園(奈良市)の鹿たちは、
遺伝的にも独自性が高いことを示した論文が、国際的な学会誌に載った。
福島大、山形大、奈良教育大の研究チームが発表した論文のタイトルは、
「歴史的な宗教保護地区がいにしえのニホンジカの遺伝子系統を守ってきた可能性がある」。
研究チームによると、遺伝子の解析から、奈良公園の鹿たちが、
紀伊半島の鹿集団から分かれたのは約1千~2千年前、特に約1400年前の可能性が高いと推定された。
研究チームは、古代からの歴史資料が多く残る近畿地方、中でも紀伊半島に着目した。
2000~16年に紀伊半島の8地域30地点から集めた鹿294頭の血液などから遺伝子の特徴を調べると、
半島東部、半島西部、奈良公園の三つの集団で構成されていることがわかった。
さらに、遺伝子が突然変異を起こす頻度をもとに、各集団が共通の祖先の集団から分かれた年代を解析。
その結果、6世紀ごろ(古墳時代~飛鳥時代)に半島にいた祖先の鹿の集団から奈良公園の鹿たちが分かれ、
16世紀ごろ(室町時代~戦国時代)に半島東部の鹿集団から半島西部の鹿集団が分かれたとみられる。
春日大社の神は、鹿に乗って常陸国(茨城県)からやってきたとされる。
今も「神鹿(しんろく)」と親しまれる奈良公園の鹿が、奈良時代から守られてきたことを科学的にも裏付ける成果だという。
チームの兼子伸吾・福島大准教授(分子生態学)は「DNAと歴史の一致に驚いた」と話す。
‘@元は同じだが分散して徐々に元のDNAが変化していったということか。
人類も同じようなものだ。