大使館再開へ。
断交中のイランとサウジアラビアは10日、中国の仲介により北京で開いた高官協議で、
外交関係を正常化させることで合意し、3カ国の共同声明を発表。
イランとサウジは2カ月以内に大使館を再開させるという。
米国やイスラエル、アラブ諸国がイラン包囲網を築いてきたが、対立を続けてきた両地域大国が、中国の仲介で和解。
中国の中東での存在感が高まり、米国の影響力低下につながる可能性がある。
中国の外交担当トップ、王毅・共産党政治局員は10日、「中国は善意の信頼できる仲介者として責任を果たした」と強調。
インドにとってイランは友好国である一方、サウジはインドの原油輸入元としてイラクに次ぐ第2位。
中印両国とも経済成長を続ける中、中東産原油は重要。
サウジとイランの外交正常化合意に中国が仲介したことで、インドは中国の動向に注注意を払うことになる。
昨年12月の習近平国家主席のサウジ訪問から今回の合意に向けた交渉が本格化した。
いずれにしろ、中東情勢が緊張緩和に向えばいいのだが、王氏が名を上げ、中国が中東に台頭してくることは懸念もある。
スンニ派の盟主であるサウジとシーア派のイランが正常化することの歴史的意義は大きい。
米国の支配力の弱体と中国の強靭化による、歴史的瞬間かも知れない。
ウクライナ戦争を上回る犠牲者を出してきたイエメンとシリアの内戦。
両内戦ではイランとサウジが対立する勢力を支援し、介入を行ってきた。
国連によると、イエメン内戦の死者は2021年末時点で既に37万人超。
その7割が5歳以下の子どもと推計され「世界最悪の人道危機」とも表現される。
シリア内戦では21年3月までに30万人超が死亡したとされる。
イスラエルとイランの緊張感が高まる中、サウジを自陣に抱き込みたいイスラエルにとって両国の正常化は悔やまれる。
イスラエルは対イランへの動きを封じられた格好になる。
サウジはイランが支援するイエメンの反サウジ勢力をおさえることができる。
イスラエルはイランの存在感が高まるのは歓迎できない。
そのイスラエルではデモが拡大。
ネタニヤフ政権は1月前半に改革の草案を公表。
ネタニヤフ政権が司法制度改革を推進し、国論を二分する議論が起きている。
改革案は民主主義の根幹である三権分立を骨抜きにする狙いだとしてデモが頻発。
政権の動きは海外でも懸念を招いている。
ネタニヤフは2019年に収賄や背任の罪で起訴され、公判が進行中。
改革には自らに有利な判断を示す裁判官を任命する狙いがあると見られている。
イスラエルのメディアによると、「抵抗の日」と称する9日の反政権デモには数万人が参加し、
エルサレムや西部の商都テルアビブなどで高速道路や橋を占拠。多数が警察に一時拘束された。
イスラエル軍は年初以来、70人以上のパレスチナ人を殺害しており、双方の緊張は高まっている。
イスラエルを訪問したオースティン米国防長官は9日、ガラント国防相との共同記者会見で語った。
「米国とイスラエルの民主主義は独立した司法の上に築かれている」とのバイデン大統領の発言を引用し、
ネタニヤフ政権が進める司法制度改革を暗に批判。
「バイデン大統領は、根本的な変更を行うには合意の形成が非常に重要だと指摘している」と述べた。
また、「米国はイランの核兵器保有を許さない」と述べ、イスラエルの対イラン軍事作戦がごく近い将来に開始されることを確認したと述べた。
流れを読みながらの習のしたたかさは侮れない。米国も忸怩たる思いがあるだろう。
ロシアのウクライナ侵略にも影響を及ぼす。
もしかしたら、イラン経由で中国はロシアに武器を輸出するかもしれない。
世界の二分化の色が強まっている。
イランとサウジアラビアの合意はイスラエルvsイランの戦争を回避させたとして評価される時代が来るのか。