安倍政治を検証した「妖怪の孫」
内山監督「成熟した大人の言動とは思えない」
「自民党のあるベテラン議員に呼び出されて『自民党がおかしくなったのは、安倍さんからなんだよ』と資料を渡された。
とはいえ簡単に手を出せる対象ではない。ある種の恐れもあったんです。
そう内山雄人監督(56)は話す。
それでも「やらねば」と動いた理由には、日々じわじわ感じる閉塞感や、恐怖があった。
第2次安倍政権ではさまざまなことが勝手に閣議で決められました。
13年の「特定秘密保護法」、15年の集団的自衛権の行使を可能とさせる「安全保障関連法」、
そして岸田文雄政権での「防衛費増額」「原発再稼働」。
自民党は野党の質問にも国民の声にもまともに答えず、そもそも会話になっていない。
なのにマスコミも危機感を全く伝えていない。その始まりが安倍さんにある、ということをみんなが感じている。
ならば安倍さんという人はなんだったのか。客観的な事実をもとに検証しなければならないと思ったんです。
だが、取材を進めていた22年7月に安倍氏が殺害される。世の中の空気が一変し、軒並み取材を断られた。
いったんすべてがストップしました。でも直後に旧統一教会の話が出てきて、
「これももともと、安倍さんが抱えていた問題なのでは」と、もう一度製作陣の気持ちが立ち上がった。
元経済産業省の官僚でジャーナリストの古賀茂明氏の協力を得て、取材を再開。
自民党は一度野党に落ちたことで、本気でメディア対策をやり始めました。
そしていまも発信力とメディアへの圧力で世論をコントロールしている。
この映画は本来ならばテレビの2時間の特別番組でできるはずです。
膨大な映像資料や取材記録が残っているんですから。でもいまのテレビではそれができない。
だれもやろうとしない。
劇中には16年に高市早苗総務相(当時)が国会答弁で「電波停止」発言をするシーンが映る。
安倍さんは敵を作る発言や言葉をあえて発する人です。
「あんな人たちに負けるわけにはいかない」とか「悪夢のような民主党政権時代」とか。
とにかく相手をくさす。およそ成熟した大人の言動とは僕には思えません。
しかもそれを一国の総理の立場で言うわけですから、それが社会全体の空気として蔓延し、いまにも続いてしまっていると感じます。
内山監督が取材のなかで特に印象深かったと振り返るのは、匿名でインタビューに応じてくれた現役官僚2人の言葉だ。
彼らは「総理が平気で嘘をつき、そのあと財務省の赤木(俊夫)さんが自殺してしまった」と、当時のショックも語ってくれた。
上司(幹部)から「政権の方向性と違うことは考えるな」と言われ、逆らえば「ぽーん、と首が飛ぶ」と。
その状況が露骨に始まったのは14年に内閣人事局が設置され、菅官房長官が人事権を握ってからだと。
彼らはこの10年間で日本がおかしくなっている状況に猛烈なフラストレーションを抱えている。
「辞め時を逸した」という発言もありました。
この映画は安倍氏の直截な批判をするものではありません。
いまの政治の背景がおおよそわかるようになっているので、どんな立場の人にもまずは観てほしい。
本作の公開で自分や家族の身に何かが起きるかもしれないという怖さは正直あります。
それでも多くの人にこの危機的な状況に気づいてもらいたいんです。
いまの岸田政権にどれほど安倍さんが影響を与えているか。
私たちはいま起きている状況を知り、何ができるかを考えないといけない。
会話にならない答弁を「おかしいじゃないか!」ともっと突き上げなければならない。
日本の状況に「希望がないなあ!」と感じるときもありますが、それでもまだやれることはある、と僕は思っているんです。
(フリーランス記者・中村千晶)
※週刊朝日 2023年3月24日号
‘@内山監督が指摘するように、大人の言動でない発言で稼ぐ輩が、
テレビなどにも多数顔を出しす、いわゆる炎上商売の輩がもてはやされる。
そういう人たちをも政権はうまく取り入れ人気を得ようとしている。
似た者同士のウインウインの関係だ。
それに加担しているのがテレビなどのメディアだ。
わたしも何度も訴えて来た安倍政権下の異常。
多分、多くの国民も理解しているのだろうが危機感は持たない。
だから、なにも動かない。
日本の失われた30年は国民の責任も大きい。
見て見ぬ振りをしてきたのだ。
失われたということは時の政権が無能だったということだ。
今の日本は、タコが自分の足を食べているのと同じだ。
いずれ足は無くなりタコは死ぬ。
そしてこれからも無関心を貫く日本の未来に向上はなく、闇が広がる。