土俵にうずくまる高安の異様な姿から、深刻なダメージは明らかだった。
11月27日、大相撲九州場所千秋楽。28年ぶりとなる優勝決定巴(ともえ)戦で、
じ引きで決まった最初の取組、阿炎―高安戦。立ち合いで左に動いた阿炎の胸に頭からぶつかった高安が、
その場で崩れるように手をついた。もうろうとした表情、荒い呼吸…。
立ち上がろうとしてもすぐには立ち上がることが出来ず、なんとか自力で立ったものの、
土俵から下りる際は呼び出しらの支えを必要とした。土俵下でも、もうろうとした表情で立ち尽くし、
腰を下ろしてからも大きく口に息をためるような呼吸を繰り返した。
土俵を囲む審判の親方衆などは、だれも手を差し伸べることなく見守り、
高安を医療的な処置に向かわせることなく、そのまま次の相撲へ控えさせた。
貴景勝関が阿炎関に勝っていたら、高安はもう一番取る可能性があった。
格闘技のリングドクター経験が豊富な脳神経外科医・諫山和男さん(68)は、
「このままでは事故が起きる。医師の指示を仰ぐ仕組みを作るべきだ」と警鐘を鳴らす。
「格闘技の常識では、あの負傷をした時点でもうノーコンテスト(無効試合)です。やらせちゃいけません。
仮にもう1回やって、軽いぶつかりあいで起きあがれなくなるようなことになったら、命にかかわる大事故になります」
と驚きとともに憤りを隠さない。
‘@以前にもあったが、女性が助けようと土俵に上がろうとしたら、女は土俵に上がるなと怒った。
相変わらず歪な相撲協会は、人間の命より伝統を重んずる協会のようだ。
だとすれば、不正などがあった時には潔く身を引くべきだ。