学術会議任命拒否で説明が必要かとの問いに、北村晴男弁護士は、
「説明なんかしたら大変なことになる」と声を荒げた。
「何で選ばれなかったかを説明しろって、野党やメディアが騒いでるけど、
例えば◯◯に出入りしてる、◯◯に所属してる、◯◯を利用して◯◯してるとかだった場合でも、
説明しろと?普通に考えてできないでしょ」と持論を述べた。
大変なことになるだけの論理で言えば、今回は本人たちが「理由を知りたい」と訴えているのだから、
大変なことにはならない。北村弁護士の弁護士からぬ論理破綻だ。
この件に関しては橋下弁護士が珍しく、政府の説明が足りないと述べている。
また、北村氏が学術会議は北大教授の研究を軍事研究につながると圧力をかけ潰したとと述べたが、
元ネタが、桜井よしこ氏のサイトに書かれた記事だとしたら、それは悪質なデマだ。
書いた本人がその事実は無かったと訂正している。
そもそも、学術会議が軍事研究に反対しているのは事実だが、大学に辞退させる権限などはない。
現に筑波大など4大学が防衛省の軍事研究助成制度に応募している。
仮に、学術会議がそんなことをしたら、今頃大問題になっている。
北大が黙っている筈が無い。
少し考えれば分かりそうなことだ。
フジの平井文夫氏、桜井よしこ氏に次いで北村晴男氏も、御用フジTVはデマを垂れ流している。
北村氏は以前テレビ難組で、森・加計問題について、
他の出演者たちが、昭恵夫人の名前が登場したことで特例取引が動いたように見える、
などと疑義を呈すると、北村氏は唐突に「一般的にはですね、そういうのチラつかせる人ほど、
一番信用できないじゃないわけですか」と声を荒げた。
しかし、ほかの出演者から、「実際に昭恵夫人の存在や政治家の「口利き」などがあり、
近畿財務局が籠池泰典氏のことを信じてしまうだけの客観的事実があった」と指摘された。
そして、サバンナの高橋茂雄さんが「(昭恵夫人が)名誉校長ほんまにやってはんねんやっていうのが、
信用してしまう決定打になるような~」と述べると、北村氏は猛攻撃を開始した。
「江戸時代とかね? 江戸時代とか中国ならわかるんですけど、日本の社会で、
そんなことが一般的には、われわれ一般人の感覚としても嘘だろ!それそりゃ江戸時代の話だろ!
と思うぐらいの話じゃないですか。それを官僚がやるっていうことがね、
それを配慮しましたっていうことがわざわざ出すっていうことが、
どういうことを意味しているというのがわからないんですよ!」とっブチ切れた。
これにMCの安藤優子も「えっ? 何が江戸時代なんですか?」と狼狽気味に尋ねる。
すると北村氏は「あ、つまり、印籠出したからみんな"へぇへぇ"となると。
昭恵夫人が名誉校長になったからそこには十分配慮するんだって、
これは江戸時代の話じゃないですか」と、今の日本でそんなことは絶対にありえないと断言。
「そうじゃないんですか日本社会っていま」と、逆上気味に吐き捨てた。
この人は本当に弁護士なのか。どの政界で暮らしているのか。
世の中、印籠を出されたら「へぇへぇ」となることもあるし、人事をチラつかされれば従うこともある。
それを最大限に利用しているのが、安倍政権であり、現在の菅政権だ。
その後、サバンナ高橋さんから、
「それやのに、こういうことがあったから、結構こうやって問題になってるということではないんですかね。
普通やったら絶対ありえへん江戸時代のような忖度が、実際こうやって行われて、
安く土地を手に入れて小学校建てようとまでしてたから、こうやって問題になってるということじゃないんですか」
と、なだめ、諭される始末。
サバンナ高橋さんの言う通りなのだが、なぜか北村氏は聞く耳を持たず、意味不明な政権擁護を連発。
「ただまあ財務大臣の立場に立って考えると、やっぱり官僚に嘘つかれたんすよ。
書き換えなんかしてないって言って嘘つかれてんすわ。で、それに対して怒ってこれを改革できるなら、
このまましばらく改革でもやってほしいし、できないならやめてもらったほうがいいんじゃないかと僕は思いますね」
と、意味不明の発言を繰り返した。
この北村氏の発言に安藤氏が「でも、改革は別の人でもできるんじゃないか」と一蹴。
北村氏は「いや、別の人ができるならいいんですけどね」と、不機嫌さを隠さなかった。
仮に、北海道大学の話が事実だとしても、あくまで大学と学術会議の話で任命拒否とは無関係。
なぜか今回、菅総理任命権拒否擁護者は、みんな話をすり替えようとしとている。
一般の会社と学術会議を同等に扱うのも無理がある。
一般社会でも、業務を進める上での必要性がなかったり、
報復人事・退職強要など不当な動機が認められたりするような場合は、
権利の乱用を指摘できる。
異動により、子どもの養育や家族の介護が困難になるようなケースでは、
育児・介護休業法第26条により一定の配慮を欠いた人事異動として拒否できる。
理由を伝えること自体に法的な義務はなくても、その異動が適切に行われるものであることは、
社員に証明する必要がある。
日本学術会議の場合は、日本学術会議法という法律が定められている。
日本学術会議が、世の中の優れた研究または業績がある科学者から会員の候補者を推薦し、
それに基づいて内閣総理大臣が会員を任命する。
総理大臣に任命権がある。
しかし、内閣総理大臣は、自分自身の判断によって任命し、日本学術会議の会員にすることはできるのか。
「それはできない」
日本学術会議法第7条2項で「会員は、第17条の規定による推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する。」と定められている。
総理といえども勝手に誰かをいきなり任命できるわけではなく、
日本学術会議の推薦に基づいた任命しか行うことはできない。
日本学術会議の推薦を受けていない人物は、総理であっても会員に任命することは出来ないのだ。
第3条 日本学術会議は、独立して左の職務を行う。
一 科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること。
二 科学に関する研究の連絡を図り、その能率を向上させること。
日本学術会議は総理からも独立して、指揮監督を受けない。
これは非常に重要な部分で、一体何から「独立」しているのか。
それは、内閣総理大臣の指揮命令から独立しているということを意味する。
内閣総理大臣の所轄とするが、内閣総理大臣の指揮監督を受ける組織ではない。
内閣総理大臣が、経費やその他の事務上の管理については面倒を見るものの、
指揮監督はしない(できない)ということなのだ。
日本学術会議は命令を受ける立場にない。
政府は一定の事項について日本学術会議に対して「諮問」(意見を求める))、
日本学術会議は一定の事項について政府に対して勧告し、
さらに政府に対して資料提出や説明などを要求することもできることとされている。
日本学術会議は政府に対して意見を述べるのですから、当然、政府の意向に合わせるのではなく、
逆に政府の意向とは無関係に、学問上の成果に基づいた知見で意見を述べなければならない。
また政府に対して「勧告」したり説明等の「要求」をするのだから、
政府の方針や政策から独立した立場であることが当然の前提になっているこは明らかだ。
総理が自身の裁量で任命を拒否することができることになれば、
日本学術会議の会員の構成が総理の意向に左右されることになり、
本来、総理の指揮監督を受けてはならないはずの日本学術会議が、
総理によって実質的に指揮監督されることになってしまう。
内閣総理大臣の意向に反する者であっても、
推薦されたら任命されなければならないというべき筋のものだ。
日本学術会議は、総理に指揮監督権はなく、内閣から独立して活動するのだから、
人事を通じた総理による監督権など存在してはいけない。
会員も個人の業績こそが重要なのであって、組織の歯車ではない。
そこにも独立性が担保されなければならない。
なぜこんなことになってしまったのか。
1983年までは総理の関与がなく、学者の選挙によって選ばれていた。
1983年の法改正で時の政府が、推薦された人物に対し総理が任命することをごり押しし、
この点が大問題となった。
このときの政府答弁では、内閣総理大臣による任命はあくまで形式的なもので、
実質的には左右するものではないとされた。
この過去の政府答弁との食い違いも、今回大きな問題となっているが、
中には、時代は変わっていると、内閣を無視したトンチンカンな発言をするものまで出てくる始末。
だとしたらそれは、内閣ではなく無閣だ。