「身内の世話は身内ですべきだ」は無理 憲法学者・南野森氏。
両親離婚、育ててくれた「大好きなおばあちゃん」
2019年10月8日早朝、社会人1年目の女性は、神戸市須磨区の自宅で、
同居する祖母の口にタオルを押し込み、窒息死させた。
認知症だった祖母には、徒歩5分以内に住む女性の伯父、父、叔母3人の子供がいた。
にもかかわらず、介護は家族の中で女性がほぼ1人で担った。
誰が祖母を介護するのか。神戸市内で清掃会社を経営する伯父は仕事に忙しく、
父は手足がしびれる病気だった。叔母にも小さい子供がいた。
「おばあちゃんに学費を出してもらったんや。あんたが介護するのが当然やろ」。
叔母の一声で、介護は女性が担うことになった。
幼稚園教諭として働き始めて1カ月後、7年ぶりに祖母との同居が始まった。
この頃、女性は高校の同級生だった親しい友人に、
「祖母の介護を始めて、おむつ代や食費も自分で出している」と打ち明けている。
慣れない仕事への戸惑いもこぼした。連日上司や同僚に怒られ、
職場で介護の話をしても「ウソつき」と、取り合ってもらえなかったという。
祖母は平日の日中こそデイサービスに通ったが、夜間や土日は自宅にいる。
女性は毎日、仕事から帰宅した後、祖母に夕食を食べさせた。
1~2時間おきにトイレに連れていき、排せつすればシャワーを浴びさせた。
深夜の散歩に付き合った。1日2時間ほどしか眠れなかった。
同居を始めて2週間で、女性は限界を察した。
「介護は無理かもしれん」。父と叔母に伝えた。
「無理かも」とこぼした女性に、叔母は「それくらいコントロールできるやろ」と言うだけだったという。
女性は祖母を担当するケアマネジャーと直接連絡を取ることも禁じられ、
何を言っても「あなたが面倒をみて」。事件が起きたのは、そんな生活が5カ月続いた末のことだった。
「おばあちゃんを殺してしまいました」。自殺未遂を図った末、女性は自ら110番した。
9月、神戸地裁で女性に言い渡された判決は、懲役3年、執行猶予5年(求刑・懲役4年)。
飯島健太郎裁判長は「介護による睡眠不足や仕事のストレスで心身ともに疲弊し、強く非難できない」と結論づけた。
また、「叔母の意向に反して介護負担を軽くする策をとることはできなかった」と親族間の関係性を指摘。
執行猶予がついた理由について「自首して反省を深め、社会内で更生が期待できる」とした。
女性の父は、判決後の毎日新聞の取材に対し「刑務所に入るべきだ。『介護をやらされてかわいそう』との前提で判決が出ている。
妹(叔母)とも話したが同じ思いだ。今後連絡することもないし、親としての愛情はない」と突き放した。
‘@少々特異なケースだが、介護疲れでの無理心中や自殺、殺人が増えている。
高齢者大国の日本、これからますます増えていくだろう。
防げなかったのか。
国が真っ先に取り組むべき課題だ。
少子化対策と同じく手遅れになる。
少子高齢無策で国が亡ぶ。
家族がいるのだから、家族で何とかするべきだというのは簡単だが、
そうは出来ない事情もある。それを切って捨てるのはあまりにも無慈悲だ。
自治体や国に「介護疲れ、いつでも何でも相談」などの窓口・対応があれば、
救われる人も多いのではないか。
明日は我が身。