ドイツはどのようにロシア産ガスから脱却したのか。
ジェニー・ヒル、BBCニュース(ヴィルヘルムスハーフェン)
ロシアのプーチンが欧州へのガス栓を閉めた時、ドイツは大勢が寒い冬を覚悟した。
工業大国ドイツがいかにロシア産ガスに依存していて無防備か、いやというほど承知した政府幹部は、
代替供給の確保に走り回った。
しかしそれから数カ月がたった今、ドイツ各地のクリスマス・マーケットにはイルミネーションがともった。
グリューワインの香りがただよう空気の中には、慎重ながら楽観的な気配もある。
ドイツ政府が急ぎ取りまとめたロシア産ガス脱却戦略は、今のところ、成功している。
オラフ・ショルツ首相は23日、「この冬のエネルギー安全保障は確保された」と議会に報告。
ドイツ政府は世界中の市場で必死に、高いお金を払って、購買計画を進めた。
おかげで、国内のガス貯蔵量が満タンになった。
そればかりではない。風の吹き荒れる北海沿岸、液化天然ガス(LNG)の輸入基地が史上最速で建設されたばかりだ。
こうしたプロジェクトの実現は通常なら何年もかかるが、政府は役所仕事をとことん省略し、
200日以下で基地を完成させた。
このほか5カ所にLNG基地の建設が計画されており、そのほとんどが来年に完成予定だという。
ヴィルヘルムスハーフェンから車で30分のところでレンガ工場を経営するエルンスト・ブホヴさんは、
「ガスがなくなったら炉を止めなくてはならない」と話した。
ブホヴさんは、いつかは環境にやさしい水素を使いたいと話すが、それには時間がかかる。
「これは政治家のせいだけではない。産業界がロシアとのガス契約を求めていた」と、言う。
ほんの1年前まで、ロシア産ガスはドイツのガス需要の60%を占め、
そのほとんどがガスパイプライン「ノルド・ストリーム」経由で輸送されていた。
議会や国民からの大きな反対にも関わらず、当時のドイツ政府はなお、「ノルド・ストリーム2」の開設を検討していた。
このパイプライン計画は、ロシアからドイツ経由で欧州に送られるガス量を2倍にするものだった。
連邦政府のエネルギー系当局によると、ドイツは現在、ロシア産ガスなしでもやっていけている。
この状態に達したことは国家的な偉業と言えるかもしれない。しかし、莫大なコストがかかっている。
独ヴィリー・ブラント公共政策大学院のアンドレアス・ゴルトタウ教授は、
「LNG価格の高騰によって、新興国を中心に、実に多くの国が必要なLNGを調達できなくなっている」
こうした国々は「ヨーロッパ諸国、特にドイツに比べて購買力が低い」
そのため、石炭など「汚い」化石燃料への依存度を高める可能性があると、教授は警告した。
LNGも結局のところ、化石燃料だ。
ドイツは、安全なエネルギー供給の価値を知るのが遅すぎた。そのツケが回ってきた。
だが、それはドイツだけではない。
ドイツはプーチンから脱却できたが日本はロシアのLNGから脱却できないどころか投資を継続している。
そして予算をエネルギーではなく防衛に回している。
外交は中身が無ければ意味がない。
会うだけ、会って金を配るだけでは外交とは言えない。
それだけなら誰にでもできる。
これが政治の差だろう。