検事長以下の検事は63歳と定めている。
黒川弘務、林真琴両氏はともに司法修習35期で検事任官同期。
黒川氏は2020年2月8日に、林氏は同年7月30日に満63歳となる。
政府は、2月8日に定年となる黒川弘務東京高検検事長の定年を延長し、
続投させる異例の人事を31日の閣議で正式決定した。
法務省は、黒川氏を退官させ、その後任に、
官邸が黒川氏の検事総長起用を強く希望。
同省はその意向に沿い、年末から現検事総長の稲田伸夫氏に退任するよう説得してきたが、稲田氏が応じなかった。
黒川氏の検事総長の道は残るが、林氏は名古屋で退官する可能性が強くなった。
なぜ、方や定年延長、方や退官。
宇宙歩譲ったとして、だとしたら、両氏とも延長すべきだ。
官邸が、今回、黒川氏を定年延長し、検事総長人事に触手したのは、
「政治主導を掲げる官邸が、政治による官僚支配に聖域はないと見せつけるため、
あえて検事総長人事に注文を付けたのではないか」と見る法曹関係者もいる。
検察庁法14条は「法務大臣は、検察官を一般に指揮監督することができる。
但し、個々の事件の取調又は処分については、検事総長のみを指揮することができる」
と定める。
「検察官に国家公務員法の定年制は適用されない」
という1981年の政府答弁の議事録があることを示されると、
森まさこ法務大臣は、その「議事録の詳細を知らない」と、驚きの答弁した。
他方、12日に、人事院給与局長は、「この81年の通り現在まで同じ解釈がつづいている」
との答弁がなされ、定年延長した閣議決定との矛盾があらわになる。
翌13日に安倍総理が「検察官も一般職の公務員であるため、
国家公務員法の規定が適用されると解釈することとした」と述べ、
政府の法解釈の変更が行われたと明言。
安倍総理の発言を受けて、19日に人事院給与局長が「つい言い間違えた」と12日の発言を撤回。
そして、20日、この法解釈変更の経緯を示す文書が示されるのだが、
人事院文書には日付がなく、決済もないものだった。
そしてこれに対し、21日、森法相は「正式な決裁はしていない。口頭で決裁した」と説明。
こんなデタラメな政権が、検察幹部の人事権を握ると、とんでもないこととなる。
もうすでになっているが、これ以上最悪になるのを阻止しなくてはいけない。
安倍政権はこれまでにも、最高裁判所裁判官人事にも介入している。
16年には、「独立性」が求められるはずの「検察人事」に既に介入している。
それが黒川氏だ。
三権分立は民主主義国家の原則。
検察官は、首相を捜査でき、起訴できる権限が与えられている唯一の組織。
だから政治的独立・中立を守らねばならず、例外のない定年退官制が行われてきた。
内閣が検察の人事に介入できるようになれば、三権分立が脅かされ、法治国家でなくなる。
既にその兆しは多数ある。
少なくとも、いま拙速にやる必要はあるまい。
なぜ急ぐのか。
急がねばならない理由があるからだ。