バスケットボール女子元日本代表の大崎佑圭(31)さん。
2016年リオデジャネイロ五輪を経験した。街に着いた瞬間から祝祭感があふれ、
選手村では各国各競技のスター選手たちと交流した。
「ウサイン・ボルトさんが誕生日で、みんなでハッピーバースデーを歌った。今も忘れられない思い出」。
リオ五輪を終えてから出産し、その後は育児に専念していたが、東京五輪への思いが大きくなった。
20年1月、日本代表候補に選出。産後の選手が選ばれたのは史上初めてだった。
手応えをつかみ始めた春先に、東京五輪の1年延期が決まった。
「1年後、本当にできるのか。できたとして、観客は入るのか。
不透明なものに突き進み続ける精神力が、私にはもうない」。
気力が続かず、現役引退を宣言した。
一般人に戻った日常で、スポーツを遠くに感じた。
「ネットショッピングのセールと同じくらいの頻度」で緊急事態宣言が出るようになった。
近所の飲食店も次々につぶれた。
公園も封鎖され、「普通の感覚で言ったら、五輪は中止するべきだと思った」。
一方、代表でともに戦った仲間の姿が頭に浮かんだ。
「人生をかけて臨む舞台を奪わないでほしい」。
二つの相反する思いは晴れなかった。