政府は、水素を運搬する大型船舶を受け入れられる港湾を複数整備する方向へ。
脱炭素社会の実現に向け、水素は発電や運輸などの様々な分野で需要拡大が見込まれており、
来年改定する「海洋基本計画」に水素の安定的な確保に向けた海上輸送網構築を明記する方針。
政府がモデルとするのが、川崎重工業や岩谷産業などでつくる、
水素推進組織「HySTRA(ハイストラ)」の実証事業。
ハイストラは今年2月、オーストラリアで生産した水素を、
「液化水素運搬船」(タンク容量1250立方メートル)で、神戸港に運んだ。
大規模な液化水素を海上輸送するのは世界でも初めての試みだった。
神戸港では、輸送した液化水素を「ローディングアームシステム」と呼ばれる荷役機器で抜き取り、
陸上の液化水素貯蔵タンク(2500立方メートル、直径19メートル)に充填した。
国土交通省によると、こうした事業を実施できる港は現在、神戸港しかないという。
政府は現在、全国の港湾を管理する自治体に水素の需要を推計するよう求めている。
自治体の報告や立地条件などを考慮した上で、複数の港を指定する方向だ。
経済産業省は26日、燃焼時にCO2を出さない水素やアンモニアの普及を後押しするため、
天然ガスなど既存の化石燃料との価格差に対して補助する制度の検討に入った。
先行する英国やドイツの制度を参考に具体策を詰める。
供給インフラ構築の支援も進める。
水素は現状、1立方メートル当たり100円程度で、LNGの10倍ほどとコストが高く、
経産省は補助を通じて供給網整備につなげたい考えだ。