中国の「一帯一路構想」の一環である、中東欧諸国との経済協力枠組み「17+1」。
スロバキアも抜ける可能性が浮上してきた。
「17+1」は、中国が一帯一路構想の一環として10年前から主導してきた、
中東欧など17カ国との経済協力の枠組み。
だが、長年ロシアに苦しめられてきた国々にとって、ロシアの侵略行為を糾弾しない姿勢は受け入れがたい。
エストニアとラトビアは8月11日、この枠組みからの離脱を発表。
これによって昨年5月に離脱したリトアニアと合わせてバルト3国が全て不在となり、
さらに中国に批判的なスロバキアなどの国々も後に続く可能性がある。
こうした動きは、ロシアのウクライナ侵略をめぐる中国の対応への不信感の表れだ。
かつてロシアの帝国主義に苦しめられた中東欧諸国にとって、ロシアの侵略行為を糾弾せず、
むしろ、ロシア寄りの姿勢を見せる中国政府の言動は受け入れ難い。
中国外交への逆風はそれだけではない。
ハンガリーとセルビアを結ぶ鉄道や発電施設の建設が大幅に遅れている。
そんな中、日本では大阪府・市の、中国と締結した港湾同士の経済連携に関する協定が、
大阪が公式に「一帯一路に参加することを表明」しているとして物議を醸している。
中国の巨大経済圏構想「一帯一路」に絡め取られたのではないかという懸念の声が府議会から上がった。
発端は今年5月10日、自民党所属の大阪府議会議員、西村日加留氏がツイッターに投稿。
大阪府のホームページ画面も添付した。
大阪府の報道発表資料で、2021年12月13日付。
大阪府市で組織する大阪港湾局と、中国・武漢新港の管理委員会が3日後の16日、
「パートナーシップ港提携」の覚書を締結すると書かれていた。
覚書は、「日本国際貿易促進協会」(本部・東京都千代田区、河野洋平会長)と、
武漢のある中国・湖北省人民政府が主催した「説明会」の席上で締結された。
覚書自体には「一帯一路」という4文字こそなかったが、
説明会のプログラムには、「中国湖北―日本関西の川海連絡輸送一帯一路連通提携プロジェクト」と、
しっかり記載されていた。
西村議員のツイッターへの投稿を受け、自民党の西野修平府議が5月30日の府議会本会議で、
吉村洋文知事に見解をただしている。
吉村知事は、「国防の観点から、問題があるなら当然やめるべきだと思うが、そうとも思わない」と述べ、
協力関係を維持する考えを示した。
大阪市の松井一郎市長は記者団に、「日本政府として一帯一路に正式にコミットしていないわけで、
地方自治体がそれを飛び越えてコミットできるわけがない。ネット世界の想像の域でしかない」と語った。
西村議員は「中国はしたたかな国だ。気づいたら一帯一路構想に組み込まれているという危険性は十分にある」
と懸念する。
中国の動きを警戒するのは言うまでもないが、大阪港湾への進出を安易に許していいのだろうか。
日本は、スリランカやセルビアの例を挙げ中国を警戒するが、
日本各地で中国が土地などを購入していることは見過ごしている。
気付いたときには「手遅れでした」では済まない。
オーストラリアでは、南部ビクトリア州が中国と提携した港湾協定を、
中央政府が安保上の懸念を理由に破棄させた。
大阪や日本政府には慎重な対応が求められる。