政治・経済、疑問に思うこと!

より良い日本へ願いを込めて。

​安倍派の裏金事件。

東京地検特捜部は1月7日に池田佳隆・元文部科学副大臣を逮捕。

池田氏は同派からキックバックを受けたパーティー券収入のうちざっと5000万円を政治資金収支報告書に記載していなかったとされ、

事件発覚後、「証拠になるものは消せ」と秘書に指示して関係資料を廃棄させていた証拠隠滅の疑いも浮上。

自民党は逮捕当日に大慌てで池田氏を除名処分にした。



だが、この事件でなぜか触れられない問題がある。

裏金システムの全体像を解明するためには、同派前会長だった故安倍氏がどう関与していたかを明らかにすることが欠かせないはずだが、

疑惑が明るみに出た当初から、「安倍氏は無関係」という報道がなされてきた。

安倍氏が派閥会長に就任して初めてキックバックの存在を知り、怒って止めさせようとしたというストーリーだ。

安倍氏は裏金づくりに全く関与しておらず、むしろ是正しようとした“正義の人”という印象さえ植え付ける。

果たしてそうだろうか。

本誌・週刊ポスト安倍氏の政治活動を支えてきた元事務所関係者から全く別の内容の証言を得た。



「安倍事務所では、昔からキックバックの裏金を『もどし』とか、『還付金』と呼んでいました。

安倍先生が派閥の会長になるまで知らなかったなんてあり得ません」

そう語るのは古参の元安倍事務所関係者だ。

「パーティー券を売ってノルマ以上であれば、カネをそのまま手元に置いていいというのは、

先代(安倍氏の父)の晋太郎先生の時代から続いていた自民党の資金システムそのものなわけです。

だから晋三先生も先代の秘書だった時代からよく知っていたはず。

だから議員も秘書も、それが当たり前の政治資金の集め方だと思っていた。

事務所にはパーティー券を売る専門の私設秘書もいたくらい。

政治資金規正法ザル法だから、問題になっても収支報告書の訂正で済んできた」

元事務所関係者は、事務所の資金は安倍氏が管理していたと証言する。



「お金については代議士本人(安倍氏)がしっかり見ていました。金庫番である筆頭秘書と会計担当の女性秘書の2人が経理を担っていましたが、

それも、代議士から『今月はこのくらいで』と毎月予算を指示されて、その金額でやりくりしていた。

大元は代議士が握っていたわけです。会計担当の女性の仕事は、帳簿の表面上の金額を合わせるという感じでした。
だから事務所のパーティーの収支は全部把握していたし、派閥のキックバックの仕組みについても代議士が知らないわけがなかった」

「若手議員の頃は選挙のため、入閣適齢期になれば大臣ポストを得るために派閥に上納し、総理・総裁を目指すようになれば総裁選の資金と、昔から自民党の政治にはカネが必要。そういう金権政治の体質が問題なのです」(同前)

このような実態があるからこそ、今回の裏金問題では安倍派を中心に数多くの自民党の大物議員の名前が挙がっている。

にもかかわらず、「安倍氏だけが知らなかった」という流れができていることこそが、病巣の根深さを示している。

安倍派の裏金づくりは、派閥パーティーの議員へのキックバック分の収入や支出を「政治資金収支報告書」に記載しないという手法だった。

これは安倍氏自らが用いてきた手段だった。政権を揺るがした「桜を見る会」前夜祭パーティー問題がまさにそうだ。

「私が知らないなかで行なわれていたこととはいえ、道義的責任を痛感しております」安倍氏はそう謝罪したが、

前出の元安倍事務所関係者は、「安倍先生は『自分は知らなかった』と説明していますが、

金庫番だった第一秘書がパーティー収支を報告していないはずがありません」と振り返る。



「安倍さんは以前からキックバックのことを知っていたはずですが、派閥会長になると止めるように指示したと報じられている。

安倍さんが会長に就任したのは桜を見る会パーティーで秘書が立件され、罰金の略式命令を受けた後です。

だとすれば、前夜祭パーティーで捜査を受けた経験から、キックバックの不記載が違法だと認識していて、派閥会長の自分にも累が及びかねないと考えた可能性がある」と指摘。

森友学園問題では、財務省が国有地払い下げに至る経緯や安倍昭恵夫人の関与などを記した文書を改竄し、

改竄を命じられた財務省職員が自殺する犠牲まで出した。しかし、これまで安倍氏自身の責任は問われていない。

今回、安倍派幹部たちは特捜部の聴取に、キックバックは「会長案件だった」と供述しているとも報じられたが、

既に亡くなった安倍氏は今回の捜査の対象外とされる。安倍政治の「黒い体質」まで含めてメスを入れ、再評価しない限り、自民党金権政治の裏にある構造を改めることなどできないはずだ。

安倍氏をめぐる数々の事件で、証拠隠滅や隠蔽が図られてきたからだ。

週刊ポスト>掲載、抜粋・編集