新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中
日本医師会の横倉義武会長は17日、日本記者クラブ主催による、
インターネットを使った講演で、「現在はまだ危機的な状況が続いており、油断はできない。
感染者をできるだけ増やさせないことと、患者を重症化させないことが大切だ」と述べた。
日本医師会は、安倍総理より早い4月1日の段階で「医療危機的状況宣言」を発表。
このままでは医療崩壊につながりかねないとして、
政府などに検査体制の充実、医療資材の提供、治療薬の早期開発などを要望してきた。
PCR検査については「2月から3月にかけて検査を増やす必要があると主張してきたが、
検査体制の問題もあり、これまでは抑制的な検査で、なかなか検査件数を増やせなかった。
もっと早い段階で十分な検査ができる仕組みが必要であった」と反省の弁を述べた。
「感染経路が分からない感染者が半分を超えた3月後半あたりからは、
PCR検査を多くやる方向に切り替えた方がよかったのではないか」と述べ、
検査体制の在り方に対して疑問を投げかけた。
同時に「検体採取の時に必要なN95マスク、フェイスシールドなど医療用資材が不足し、
検査を行う人員も十分足りていなかった。保健所の職員も抑制されてきており、
私の地元の福岡県では20年前は保健所が20カ所近くあったが、いまは8カ所しかない。
効率化された影響が出ている。恐ろしい感染症に対しては、常に準備しておかなければならない。
その点で今回の新型コロナウイルスへの対応では我々は反省しなければならず、
危機意識を持たなければならない」と、政府の効率化の悪影響と、危機意識の無さを悔やんだ。
‘@安倍政権に忖度して、早い対応が打てなかった日本医師会。
ウイルス感染は、後から後悔しても遅いのだ。
一秒でも早い対応が求められる。
その間に亡くなる人は増えている。
検査数を増やすと言いながら、状況はなかなか改善しない。
「呼吸器の専門医が『これは検査した方がいい』と言っても、保健所が対象にならないと断ってくる。
肺を診ている専門医が判断していても状況は同じだ。
発熱し自宅待機している人の中には自身がPCR検査を受けられないだけではなく、
陽性と判定された人と濃厚接触の疑いがある家族がいても、
その家族さえも検査が受けられないというケースもある。
厚労省は、「地方におけるPCR検査は保健所と医師会で決めろ」と、
丸投げ状態なのが現状のようだ。
検査が行われないことで、医療従事者の感染リスクは大きくなっている。
地方病院では心筋梗塞で救急で運び込まれた高齢の患者のCTを撮ってみたら、
心筋梗塞の症状は一切なく、肺が真っ白で亡くなったという話も聞く。
しかし、PCR検査はしないので、新型コロナに感染していたかどうかは分からない。
こういったケースは全国で散見される。
運び込まれる患者の感染が分からない状況が、看護師の感染を生み、
院内感染を拡大させている。
医療従事者が自宅待機を余儀なくされれば当然人出不足となる。
医療スタッフが感染や疲弊で不足してくると、一般の患者の手術も行えなくなる。
病院も仕方なく手術の数を減らし始めているという。
手術すれば助かる命を助けられない。
今後、手術が間に合わないというケースも十分起こりうる。
救急車もたらい回しで中々救急患者が受け入れられない。
運び込まれても、緊急手術ができない可能性さえある。
助けられる命が助けられない状況はますます深刻化してくる。
感染が起きてから、すでに2か月以上が経っている。
対策を取るには十分な時間があったはずなのに、国はいったい何をしているのか。
安倍総理は14日、「諸外国と比しても、わが国の対応が遅かったとの指摘はあたらない」
と述べている。
しかし、安倍応援団の医師会も対応の遅れを猛省している。
今頃になって、PCR検査反対論者もPCR検査をした方が良いと言う。
その言い訳が、発熱外来や軽症者のホテルなどの用意ができたからと述べる。
しかし、当初そんなことは一言も言っていなかった。
PCR検査の精度が低いとか、80%は軽症者なのだから、
検査をして感染者数を増やしても意味がない。
全国民が感染すればウイルスの抗体ができるので、
ほったらかしておけば良いなどの暴論を吐いていた。
PCR検査の精度は高まったのか。
全国民が感染しなくていいのか。
そんな人たちが今もテレビに出て場当たり的な発言を繰り返している。
感染が日本で拡大しているのは、誤認やぬるい発言を繰り返していた彼らにも責任がある。
岡田晴恵教授は当初からPCR検査を推進し、発熱外来を提唱していた。
台湾では先週、新規感染者がゼロになる日が3日あるなど、
現在まで最も効果的にコロナを押さえ込んでいることで世界から注目されている。
日本と台湾は2月から3月にかけて、同じように感染者数は低いレベルを維持していた。
しかし現在、3月下旬から現在まで、日本の感染者数は大幅に増加し、
日本と台湾では雲泥の差となっている。
初期対応の差だ。
韓国も日本と同様だが収束の兆しをみせている。
多くの人は、日本の医療体制は先進国の中でも充実していると思っているが、
ベッド数は多いがICU病床数や人工呼吸器などは貧弱だ。
だから、PCR検査が少なくして、医療体制が崩壊しないように感染者数を抑えてきた。
しかし、その間に感染爆発を想定して準備しておくべきだったのに、
今やっと動き出した感がある。
そして最も重要なのはトップの素早い適切な判断だ。
日本の感染者数も死亡者数も右肩上がりで、今のところ予測がつかない状況だ。
楽観論は排除した方が良い。
当初、遅くとも夏には収束するだろうと予測する専門家もいたが、
インドネシアやサウジアラビアのような熱帯の国でも感染が拡大していることを考えると、
楽観できそうにない。
これだけ地球規模で感染が広がれば、1918年のスペイン風邪のように、
第二波、第三波と感染が続きながら、次第にその波が終息していくと見た方が良いのだろう。
新型コロナウイルスとの戦いは長期戦になる覚悟を持った方が良い。
日本も全国規模で感染が広がっている。
そこを人が移動すれば、第二波、第三波と感染を広げることとなる。
何としても感染を抑え込まなくてはいけない。
だからといって過度に恐れる必要はないが、決して油断をしてもいけない。
自粛しながら、確たるワクチンや治療薬の出現を待つしかない。