東京電力福島第1原発のタンクにたまり続けている汚染処理水について、
政府は、放射性物質の濃度を下げた後に海に流して処分する方針を固めた。
月内にも、廃炉・汚染水対策の関係閣僚会議を開いて決定する。
風評被害への対策については、今後も継続して議論し詰めていく。
ただ、放出には新たな設備が必要で、原子力規制委員会の審査や整備に2年程度かかる見通し。
海洋放出は、こうした手続きなどを経た後になる。
汚染水には、高濃度の放射性物質が含まれている。
このため、東電は多核種除去設備(ALPS、アルプス)に通すなどして、
濃度を下げた汚染処理水をタンクにためている。
しかし、アルプスでもいトリチウムは取り除けない。
空きタンクを設置できる敷地は手一杯の状態だ。
‘@汚染水処理は大きな課題だったが、ここに来て海洋放出を決定するようだ。
トリチウムの安全性については意見が分かれている。
政府は、「水と同じ性質を持つため、人や生物への濃縮は確認されていない」としている。
しかし、トリチウムが有機化合物中の水素と置き換わり、食物を通して、
人体を構成する物質と置き換わったときには体内に長くとどまり細胞に影響を与える。
さらに、DNAを構成する水素と置き換わった場合には被ばくの影響が強くなる。
トリチウムがヘリウムに壊変したときにDNAが破損する影響などが専門家の間でも指摘されている。
トリチウム放出には賛否両論あるようだが、やっと元に戻りつつある風評被害は大丈夫なのか。
全国漁業協同組合連合会(全漁連)の岸宏会長は15日、経済産業省と環境省を訪れ、
政府が最有力視している海洋放出に対して「わが国漁業者の総意として、絶対反対。
慎重な判断を求める」と2省の大臣に要請した。
海洋放出ということになれば、当然ながら風評被害の発生が必至であり、
ひいては全国の漁業者は挫折感を含めて将来の漁業の展望を壊しかねない。
そんな懸念をしております。
どうか国においては、漁業者の思い、これまで努力した経緯、
また我々もサブドレンの問題では苦渋の決断でありましたが、
福島の事故処理という観点で苦渋の決断でしたが、協力した経緯があります。
今、漁業者がしっかりと頑張ろうとしている努力が水泡に帰さないように、
是非、慎重な判断をしていただきたい。」
福島県漁連の野崎哲会長は、「我々7月に国の意見聴取で反対であることを表明しました。
福島の漁業は来年4月からの本格操業を目指して、一丸となって進んでいる。
後継者の方々もみなやる気になっている。
漁業者の了解なしでは海洋放出は行わないという約束があるもとで、われわれ進んできている。
先般の意見交換会でも申し上げましたが、海洋放出につきましては、
全国の漁業者の総意として反対であると改めて申し上げて、慎重な判断を求めたい。
どうぞよろしくお願いします」
梶山経産大臣は、「廃炉汚染水対策の着実な実施は原子力災害からの復興の大前提であります。
これを遅延させないために日々増加しているALPS処理水の取り扱いについて、
政府として責任を持って早期に方針を決定していくことが必要であると考えています。
本日いただいたご要望も重く受け止めた上で検討を深めて参りたいと思います」と述べた。
『要望も重く受け止めるが、さらに深めて実行する方向で進める』との考えだ。
小泉環境大臣は、「岸会長、野崎さんからも地元福島を代表されるような思いを聞きましたが、
我々としても廃炉、これをいかに着実に安全に進めることができるのか。
こういったことを考えないといけない。
いかなる決定があったとしても、みなさんの思いをしっかり受け止めたうえでの決定をしなくてはならない。」と述べた。
『代表者の意見は聞いたが、我々は着実に進める。みなさんの思いを受け止めたうえで実行しなくてはいけない』
との考えだ。
要は、「要望は重く受け止めるが、実行することに変わりはない」ということだ。
難しい問題であることには間違いないが、コロナ禍のなかでの決定は姑息な菅総理らしい。