1月18日に『Nature Medicine』に掲載された論文によれば、
脳内に埋め込んだ電極で「喜びの回路」を刺激することで、
難治性のうつ病が数分で改善したとのこと。
1月18日に『Nature Medicine』に掲載された論文によれば、
脳内に埋め込んだ電極で「喜びの回路」を刺激することで、難治性のうつ病が数分で改善。
カリフォルニア大学の研究者たちは、5年に及ぶ臨床試験の結果を元に、
「神経マッピング技術」を開発。
この神経マッピング技術は脳の各地に差し込んだ電極から、患者一人一人の神経回路の特性を認識し、
その患者にとって最適な治療部位(刺激場所)をピンポイントで探し出すように設計されている。
そして今回、マッピング技術の性能を確かめるために、
難治性うつ病に苦しむ36歳の女性患者に対して、はじめての試験が行われた。
女性患者は覚えている限り5年間、一度も笑ったことがないほどの重いうつ病。
神経マッピングによって発見された最適部位に電気刺激が行われると
「突然、心の底から本物の歓喜と多幸感を感じ、笑みが絶えない状態に変化した」とのこと。
そして、さらに興味深い点は、刺激する場所によって、女性患者が感じる喜びの質に違いがあった。
ある場所では「うずくような喜び」が起こり、他の場所では「霧が晴れたような覚せい感」を覚え、
また別の場所では「穏やかな喜びの感覚」を感じたという。
しかし、電気刺激が研究者たちの手動で、短期間行われるだけの状態では、
また症状がぶり返しかねない。
患者が日常生活を取り戻すためには、電気刺激を自動化する必要がある。
そこで研究者たちは、いわば電気刺激による感情発生を自動化する方法に取り組み、
電気刺激の自動化を行うにあたり、新たな制御チップを開発。
制御チップを脳の各所に埋め込み、患者の気分の落ち込みを感知すると、
自動的に「喜びの回路」に最適な電気刺激を行うようにプログラムし、
電極からのデータを常に監視。
脳に埋め込まれた制御チップが機能し始めると、うつ病にかかる以前の自分を取り戻し、
健康な人間と同様の生活を送れるようになった。
現在、患者はコロナ禍のなかでも安定した精神状態を維持し、
両親の介護を精力的に行っているとのこと。
今回の研究により、数分の治療でうつ病が治ることが示された。
この技術が上手く用いられれば、他の治療にも生かされる可能性がある。