西浦教授「Go To トラベル研究」論点(要約)。
今回の私たちが発表した記述疫学研究1編は、
それだけでGo Toトラベルという政策の是非を強く問うものではありません。
また、この私たちの記述疫学研究が、広い範囲で報道に取り上げられましたが、
それが政策議論に直結しすぎるのも私たちの意図するところではありません。
今回の研究で対象とした24県。
これらの県の多くでは第1波の流行収束後、ほとんど感染者がいない(あるいはそれに近いくらいの)
状態が続いてきました。
つまり、もともと第2波が拡大する前まで散発例が出る程度に留まっていたのです。
実際、感染者の20%が旅行関連ということは、
研究期間中の24県の平均的な実効再生産数は0.8程度となります。
しかし、Go Toトラベル前でもそうだったのですが、そういった地域へ旅行関連感染者が入り、
小さな流行が起こる、というイベントが繰り返されてきました。
今回の私たちの研究データを見ると、
旅行関連感染者と非旅行関連感染者のいずれもコントロール期で増えています。
ここで、非旅行関連感染者が増えているのはどうしてでしょうか?
もともと、ほとんど感染者がいない県だったのに増えているわけです。
それは人が動いて、旅行をすることによって持ち込まれたからだと考えています。
つまり、次第に旅行関連感染者が連発すると、その帰結としてローカルの流行が連続して起こりますから、
旅行関連だけでなく非旅行関連感染者も増えるのです。
今回選択したような(本来はほとんど感染者がいなかった)24県で非旅行感染者が増えているというのは、
都道府県境をまたいで移動することによって流行がまず起こり、
それで非旅行関連感染が増えたものと考えています。
帰属するコミュニティーや近い友人・家族の感染状況によってリスクが乱高下するのです。