宇宙の成り立ちの解明につながると期待される。
身の回りの「物質」と性質がわずかに異なる「反物質」の動きを、
レーザー光で操作することに成功したと、カナダ・ブリティッシュコロンビア大の、
百瀬孝昌教授らの国際チームが、31日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。
反物質は、宇宙や身の回りにある普通の物質と質量は同じだが、
電気的な性質が反対の粒子でできている。
宇宙誕生時に普通の物質と同じ数だけ生まれたが、現在の宇宙にはほとんど存在しない。
消滅した理由は一部しか分かっておらず、全容解明は物理学の重要な課題になっている。
研究チームは反物質の一種である「反水素」の原子を人工的に作り、
高性能なレーザー光を照射して、その動きを極低温で制御する実験に初めて成功した。
この手法は「レーザー冷却」と呼ばれ、反物質の性質を厳密に測定できる。
普通の水素とは異なる未知の性質が見つかれば、宇宙から反物質が消えた理由、
宇宙で物質だけが残った謎に迫れる可能性があり、ノーベル賞級の成果につながる。
チームのカナダ・ブリティッシュコロンビア大の百瀬孝昌教授は、
「反物質の謎の解明は宇宙の認識を根本的に変える可能性を秘めている。
その足掛かりとなる大きな一歩だ」と話す。