(抜粋)
新型コロナウイルスの感染拡大は止まらず、
東京都などに出されている緊急事態宣言の再延長は避けられない情勢だ。
この夏にその東京で五輪・パラリンピックを開くことが理にかなうとはとても思えない。
冷静に、客観的に周囲の状況を見極め、今夏の開催の中止を決断するよう菅首相に求める。
何より大切なのは、市民の生命であり、日々のくらしを支え、成り立たせる基盤を維持することだ。
五輪によってそれが脅かされるような事態を招いてはならない。
まず恐れるのは、言うまでもない、健康への脅威だ。
選手と関係者で9万を超す人が入国する。
国際大会が開かれてきた実績を強調する。
しかし五輪は規模がまるで違う。
「賭け」は許されない
当初から不安視されてきた酷暑対策との両立も容易な話ではない。
医療の逼迫(ひっぱく)に悩む東京近隣の各知事は、
五輪関係者だからといって優遇することはできないと表明している。
県民を守る首長として当然の判断だ。
もちろんうまくいく可能性がないわけではない。
十全ではないとわかっているのに踏み切って問題が起きたら、誰が責任をとるのか、とれるのか。
「賭け」は許されないと知るべきだ。
人々が活動を制限され困難を強いられるなか、それでも五輪を開く意義はどこにあるのか。
そもそも五輪とは何か。社会に分断を残し、万人に祝福されない祭典を強行したとき、
何を得て、何を失うのか。首相はよくよく考えねばならない。