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​​生活保護を利用できていたら、大阪放火事件。

大阪・松井市長「容疑者自ら取り下げた」


2021年12月、大阪の雑居ビル内のクリニックで放火事件が起き、25人が死亡。

あまりにも痛ましい事件に日本中が衝撃を受けた。

そんな大阪の放火事件について、1月13日、重要な事実が報道された。




雨宮処凛作家・活動家>

それは、容疑者が昨年と数年前の2回、生活保護の申請について、

大阪市此花区役所に相談に行っていたものの、受給には至っていなかったということだ。

男性は土地、建物を所有していたが20年から家賃収入は途絶え、生活に困窮していたものとみられている。

ちなみに生活保護は、住んでいない不動産を所有していると処分するよう言われるが、

すぐに売れるわけではないので、売れる間生活保護を利用し、売れたら保護費を返還すればいい。

売れるのを待っていたら、その間に餓死してしまう可能性だってあるからだ。

また、自らが住んでいる持ち家であれば、資産価値が二千数百万円ほどであれば。

住み続けながら生活保護を利用できる。

容疑者は、このような説明を受けていたのだろうか。

ただ漠然と、「不動産あると受けられないんですよねー」というような対応をされてはいなかっただろうか。

ちなみに15年1月に約150万円あった残高は、昨年1月にはゼロ円になっていたという。



困窮し、先の見えない状況の中、役所に行ってもなんだかんだと理由をつけられて返される。

しかも、2回も。その間にもどんどん生活は逼迫し、精神的に追い詰められ、

自暴自棄になったことが事件の引き金のひとつだとしたら一一。そこまで考えて、目の前が暗くなった。

報道によると、容疑者は、生活保護の申請手続きの段階で止まっていたという。

途中で「もういいです」などと言って辞退したこともあったそうだ。

そのことを知って、目の前が暗くなった。

なぜなら、「もういいです」と途中で席を立たせるようなやり方は、

ある意味で常套手段になってしまっているからだ。

当人が死亡した以上、本当の動機はわからない。

ただひとつ言えるのは、容疑者が生活保護を利用でき、生活の不安が解消されていたとしたら、

あのような事件は起こらなかった可能性はありうるのではないかということだ。

むろん、どんな背景があろうと、容疑者のしたことは絶対に許されないことであることも付け加えておきたい。



さて、この報道を受け、もうひとつ頭に浮かんだのは、年明けに行った福祉事務所の窓口の対応である。

年末年始、炊き出しや相談会で出会った人に同行して、

年明けから2回、区役所に同行したのだが、どちらの対応もショックを受けるものだった。

最初のA区は、本人に生活保護申請とは関係ない「家族関係のあり方」について根掘り葉掘り聞き、

本人が答えづらい中、精一杯答えると「それってどうなの?」「人としてどうなの?」と高圧的に繰り返した。

「あの、それって申請と関係ないですよね?」と割って入っても、ほとんど聞く耳を持たない。

また、当人が扶養照会に抵抗を感じていることから、扶養照会をしてほしくないという申出書を出そうとすると、

「でも、しますから、出すのは勝手ですけど」と口にする。

わざと怒らせようとしているのだろうかと勘ぐるほどで、

同席しているだけで何度も頭が真っ白になり、悔しさに私まで涙ぐみそうになった。

もう一人、別のB区に行った際は、私と地方議員が同行していたにもかかわらず、

途中まで生活保護申請すらさせてもらえず、施設行きの話が勝手に進められていた。

そのことに気づき、慌てて申請すると主張して事なきを得たものの、

同行者がいてもこれほど「油断も隙もない」状態ならば、一人で行ったらどれほどの対応をされるのだろう。



実際、年末年始に会った中には、一人で役所に生活保護申請に行ったものの、

「ホームレスに見えない」という理由で追い返されたという若者もいたし、

「自力でなんとかしろ」「若いから働ける」などの理由で申請させてもらえなかったケースも多く耳にした。

先に書いたA区の場合も、おそらく私がいなければ、当人は「もういいです」と怒って帰ってしまっていたかもしれない。

窓口の職員はそれで「面倒が終わる」かもしれない。

が、席を立つ方は、その日の行き場もお金もなく、なんのあてもないまま放り出されるのである。

せっかく福祉に助けを求め、勇気を振り絞ってやってきたのにそのような対応をされてしまったら、

「もう二度と福祉の世話にはならない!」と憤慨するのも当然だろう。

人手と予算を増やしてほしいと国に言い続けてきた。もうずーっと昔からだ。

しかし、人手は増やされない。だからこそ、丁寧な対応がなされず、

最後のセーフティネットからこぼれ落ちてしまう人たちが続出する。

このことを、国は本気で考え、取り組んでほしい。

セーフティネットを分厚くすることで、防げる悲劇は確実にあるのだ。

そのことを、本当に本当に肝に命じてほしい。

(もし、生活保護を利用できていたら 大阪の放火事件についての新事実。(雨宮処凛)』より転載)



‘@谷本盛雄容疑者(61)の行為は絶対に許されるものでは無いが、

生活保護申請の役所の酷い対応はよく耳にする。

国や役所は、人の命が係わっていることを今一度肝に銘じ対応すべきだ。