コロンビアのメデジンにある2階建てのレンガ造りの建物の中では、
科学者たちが蒸し暑い研究室で毎週3000万匹の遺伝子組み換え蚊の飼育に取り組んでいる。
そして、世界11カ国で自然界に放たれる。
このプロジェクトに出資している億万長者のビル・ゲイツは、「ホラー映画のワンシーンではありません」と断じる。
「この工場は実在するのです。そして、放たれた蚊は、何百万人もの命を救い、向上させることができるのです」
と、方強く訴える。
この工場で育てられた蚊はウォルバキア菌を持っており、
デング熱やその他のウイルス(ジカ熱、チクングニア、黄熱病など)を人間に感染させないようになっている。
ゲイツ氏は、「この蚊を放し、野生の蚊と繁殖させることで、細菌を拡散させ、ウイルス感染を減らし、
何百万人もの人々を病気から守っている」と主張。
インドネシアで行われた研究によれば、ウォルバキアを持つ蚊はデング熱に対して77%の予防効果を発揮し、
86%は入院に対して有効であることが示されている。
ゲイツ氏は何億匹ものウォルバキア蚊を繁殖させる計画だ。
蚊はコロンビア、ブラジル、メキシコ、インドネシア、スリランカ、ベトナム、オーストラリア、
フィジー、キリバス、ニューカレドニア、バヌアツ、合計11カ国で放たれる。
ゲイツ氏は、世界の救世主になるのか。
蚊を放つことは当然その国が了承するのだろうが、仮に失敗してウイルスがさらに増殖したら、
誰が責任を負うのか。
武田薬品工業は8月23日、蚊が媒介するウイルス感染症であるデング熱のワクチンが、
インドネシアで承認されたと発表。
東京・目黒区にある「公益財団法人目黒寄生虫館」
研究者だけでなく、一般の人にも寄生虫について知って欲しいと、
1953年の開館以来、入館無料を貫いている。
コロナ禍で来館者が減少し、大事な収入減の1つであるグッズの売り上げが減少。
無料を維持するため年間500万円を目標に寄付を呼びかける中、
ゲイツ氏は熱心に館内を見て回った後、自身が力を入れる研究と関わりが深い、
寄生虫のストラップとボールペンを購入。
この出来事は瞬く間に世界中に広がり、一般の人が寄付を呼び掛けたSNSが拡散。
今年度210万円ほどしか集まっていなかった寄付金は、
公益財団法人目黒寄生虫館 倉持利明館長は、
「ゲイツ氏にお尋ねしたんですけど、どうしてここに来てくれたの?と。
彼の活動に非常に近いものがある」と、話したそうだ。
ゲイツ氏の小さなものにも目を向ける情報量の多さとその行動力とその影響力の大きさ。
寄生虫館来館に感謝。