「餃子ギョーザの王将」を展開する王将フードサービスの社長だった大東隆行さん(当時72歳)が、
2013年に京都市内で射殺された事件で、京都府警は27日、
特定危険指定暴力団・工藤会系組員の男(55)を、殺人容疑などで逮捕状を取った。
男は、福岡市内で大手ゼネコン社員が乗った車を銃撃したとして、福岡県警に18年6月に逮捕された。
銃刀法違反などに問われ、懲役10年とした実刑判決が確定し、福岡刑務所で服役中。
王将事件は13年12月19日早朝に発生。大東さんは京都市山科区の本社ビル前の駐車場で、
何者かに胸や腹を4発銃撃されて死亡。発射された4発全てが急所に命中していた。
府警は「銃の扱いに慣れたプロの手口だ」そんな見方を強めていた。
事件現場付近の防犯カメラ映像などから、実行犯はバイクで逃走。このバイクは事件前に盗まれたものだった。
駐車場近くの建物脇の通路からたばこの吸い殻が見つかっていたが、付着物のDNA型が、この男のものと一致。
物色する際に使ったとみられる車は男の知人のものだったことも判明していた。
容疑者として浮上したのは、特定危険指定暴力団工藤会系組員の田中幸雄容疑者(55)。
捜査は一気に進展するかに見えたが、
たばこだけでは第三者が現場に捨てた可能性が排除できなかった。
府警は、火災の専門家に吸い殻の詳細な鑑定を依頼。事件当時、現場では小雨が降っており路面はぬれていた。
専門家は、吸い殻の消え方や過去の研究データなどから、
「ぬれた現場通路で消されたたばこであると推定できる」との鑑定結果をまとめた。
田中容疑者が現場でたばこを吸っていたことを示すものだった。
この鑑定結果を最近になって得た府警は、田中容疑者が事件に関与した疑いを強めた。
しかし、たばこの吸い殻は田中容疑者が現場にいたことを示せても、大東さんを射殺したことを示す証拠にはならない。
殺人容疑での立証には高いハードルがあった。
また、大東さん個人と田中容疑者や工藤会との接点も確認されていない。
府警は、田中容疑者はあくまで実行役で、何者かから指示を受けた疑いがあるとみている。
その中で府警が注目しているのが、王将フードサービスを巡る不適切な取引だ。
王将フードサービスを巡っては、反社会的勢力との関係を調べるために設置された、
同社の第三者委員会が16年3月、同社の創業家が1995年頃から特定の企業経営者と、
総額260億円に上る不適切な取引を繰り返していたことを記者会見で明らかにした。
うち約200億円が王将側から流出、約170億円が回収不能になったことを明らかにしている。
第三者委によると、2000年に社長に就いた大東さんはこうした取引を清算しようとしていたという。
大東さんは、こうした不適切取引の解消を進め、13年11月に内部報告書をまとめていた。
しかし報告書は公表されず、その1か月後に大東さんは殺害された。
捜査関係者によると、大東さんと男の接点は確認されていない。
今年12月で事件発生から9年。捜査は重大局面を迎えた。
府警は田中容疑者から詳しく事情を聞き、事件の背景を含めて慎重に捜査を進めている。