ワクチン接種が原因で発症したとみられる異常な症状で命を落とす患者たち。
経験したことのない事態に医師や看護師は声をあげ始めた。
大阪医科薬科大学法医学教室の鈴木廣一名誉教授は、大阪府警から解剖を依頼された遺体にメスを入れ、
思わず目を見張った。府内に住む61歳(当時)の男性、Aさん。
心臓と肺をつなぐ太い動脈を切り離したときのことだった。
血管から流れ出てきたのは、ドロリとした血の塊—血栓だ。
男性の肺動脈には、コーヒーゼリーのような赤茶色の血栓がびっしりと詰まっていた。
「明らかな肺動脈血栓塞栓症でした」(鈴木)
脚などでできた血栓が血流に乗って肺の血管内に集まり、塞いでしまう疾患。
血栓は、そのほとんどが足首から膝にかけて走る静脈でできる。
そのため鈴木教授はまず、左脚の静脈を調べた。だが、血栓はどこにも見当たらない。
続けて右脚を調べると、静脈にぎっしりと血栓が詰まっていた。
おそらく死の直前、Aさんの両脚の血管には、どちらも血栓が生じていた。
何かのきっかけで左脚の血栓がはがれ、肺動脈を塞いで、彼を死に至らしめたのだろう。
解剖の結果、鈴木教授はそう推測した。
Aさんは'21年8月5日、ファイザー社製ワクチンの接種を受けた。
それから5日後の8月10日、妻に胸の苦しさを訴え、接種を受けた医院に向かおうと自転車に乗った直後、
うめきながら倒れたという。
救命救急センターに運ばれたがすでに心肺停止状態で、間もなく死亡が確認された。
Aさんは7日の時点で家族に胸の違和感を訴えていた。
「その時、すでに脚の血管から小さな血栓がはがれ、肺の血管に詰まり始めていたと考えられます。
そして自転車を漕いだ際、左脚の静脈の大きい血栓がはがれて一気に肺の動脈に流れ込み、塞栓状態になった。
膝裏辺りの血管で生じる血栓は、直径1cm近くになることもあるのです」(鈴木氏)
Aさんは毎朝の散歩を日課にしており、大きな血栓が生じる可能性は低かった。
原因として考えられるのは、ワクチンを接種したことだけだ。
鈴木教授はAさんの死亡検案書にこう記した。
〈死因は肺動脈血栓塞栓症と心筋炎〉〈ワクチンとの因果関係あり〉
今なお国は、ワクチンと「副反応疑い死」の因果関係を一件も認めていない。
その一方で、不審な死を遂げる人は後を絶たない。
そうした現実に違和感と怒り、悲しみを抱いているのは遺族だけではない。
現場で死にゆく人を目の当たりにする医師や看護師も同様だ。