管理職だけが「幸福」
人材サービス・シンクタンク「パーソル総合研究所」(東京都港区)が12日、
「日本の働く幸せ実感はなぜ低い 世界18か国・地域の主要都市における就業実態・成長意識調査」というリポートを発表。
調査対象の18か国・地域の中で、日本の「幸福度」は最下位。
しかも、日本では管理職だけが「幸せ」だという。
パーソル総合研究所は2022年11月、日本を含むアジア太平洋地域(APAC)と、
欧米5か国を含めた世界18か国・地域のそれぞれ20歳~69歳の就業している男女約1000人ずつを対象に、
「働く幸せ実感」(Well-being)についての意識調査を発表。
その結果、日本は18か国・地域の中で最も「働く幸せ実感」が低かった。
また、その逆である「働く不幸せ実感」も、下から3番目に低かった。
つまり、日本人は「働いて幸せだ」と喜ぶ割合が最低である一方、
「働いて不幸だ」と嘆く割合も非常に少ない。
「働く幸せ実感」が最も高い国はインドで、次いでインドネシア、フィリピン、中国、ベトナム、タイとアジア諸国が続く。
いずれも経済発展が盛んな国々で、調査対象者の8割~9割以上の人が「幸せ」を感じていた。
どうしてこんな結果になっているのか。
組織文化の特徴の差を、「働く幸せ実感」「働く不幸せ実感」の度合いと重ねて見ると、
「権威主義・責任回避」という特徴が、「働く幸せ実感」ではマイナスの最も下に、
「働く不幸せ実感」ではプラスの最も上に登場している。
つまり、日本企業の「権威主義・責任回避」という組織文化が、特に若い働き手の幸福感を低下させる重大な原因の1つになっているということだ。
このことは、一般社員・従業員層と管理職層に「幸福感」を聞いた調査結果によく表れている。
「権威主義・責任回避」の組織文化が、一般社員・従業員層では「幸福感」にマイナスに働いているが、
管理職層ではそういった傾向はなく、むしろ「幸福感」が高い。
日本以外の国々では、このように管理職層と非管理職層の間で逆転現象は起こらない。
「管理職だけが幸せを感じる国」は日本だけなのだ。
もう1つ、日本の「働く幸せ実感」を下げている重要な要因は、日本の就業者の「寛容性」の欠如だ。
昨年11月の調査では、日本は香港に次いで、「自分とは考え方や好み、やり方が違う人と積極的に関わりたくない」といった非寛容的な回答が多く、
「寛容性」が18か国・地域の中で香港に次いで2番目に低かった。
香港と日本が突出して「幸福感」が低いことがわかる。
つまり、自分とタイプが違う同僚を認めることができない人が多いということだ。
これでは、職場内がギスギスするばかりで、相互尊重の組織文化は育ちにくくなり、お互いに幸せになることは難しい。
今回の調査結果について、パーソル総合研究所主任研究員の井上亮太郎氏は、
「日本は『上層部の決定にはとりあえず従うという雰囲気がある』
『社内では波風を立てない事が何よりも重要とされる』などの文化的特徴が強く、
日本の就業者の働く幸せ実感が低い主な要因であることが示唆された」
「とりわけ職位の低い若手層の働く幸せ実感が低く、不幸せ実感が高い。
日本の就業者は『所属組織に自分を捧げる』ことを調査国・地域中最も重視しない(帰属意識が低い)傾向とも整合すると考える」
「就業者の寛容性が高い国・地域ほど、職場の相互尊重の組織文化が強く、働く幸せ実感が高く、不幸せ実感が低い。
「DI&E(個々の違いを受け入れ、認め合い、生かしていく)の観点からも、組織や社会において、
組織のパフォーマンスやイノベーションにも寄与すると考える」と分析。
‘@結局は昭和の朝から晩まで働いて、みんなで飲んで憂さを晴らした「日の丸護送船団」の方が楽しかったということだ。
個を重視するあまり、お互いが遠慮がちになり距離感を保つようになった。
隙間を作ってしまったのだ。
わたしの周りでも、楽しく働いている人は「定年後も仕事をやりたい」と思っているが、
「仕事が職場がつらい人」は早く辞めたいとこぼす。
管理職が幸せを感じるのは地位や報酬などいろんな要素が含まれる。
今の若者は管理職を望まない人が増えているようだが、同じ会社で齢を重ねて平でいて楽しいはずもない。
若者の無機質さが結果に反映されているのだろう。
井上氏の指摘する、社内の波風よりも寛容性の方が影響が大きい気がする。
昔から否応もなしに上司に従ってきたが、それが当たり前の風潮だから受け入れやすかった。
ミクロな点から見れば従属社会だがマクロな点から見れば昔の方が寛容だった気がする。
そういった意味ではIT系企業が、社員を大切にし働きやすい環境を作ることに注力している。