マイナ保険、印刷した写真使って3秒で突破。
2024年12月に健康保険証を廃止してマイナンバーカードに一体化する政府方針だが、
他人のマイナ保険証を不正利用する「なりすまし受診」への懸念が高まっている。
政府は本人かどうか判別する顔認証システムや暗証番号入力で防げると説明するが、
非公式の写真素材でシステムを通過できてしまうなどセキュリティー対策の穴が露呈。専門家から制度設計の見直しを求める声が出ている。
マイナ保険証に載っている顔写真をカメラで撮ってカラープリントした紙。顔認証読み取り機にかざすとわずか3秒で本人と認識された。
長崎市の医師本田孝也さん(67)が注意喚起のためユーチューブで限定公開している動画の内容だ。
自身が運営する医院で動画撮影したもので、マイナ保険証が悪用されれば顔認証システムを突破される恐れがあると警鐘を鳴らす。
厚生労働省によると、現行保険証のなりすまし受診は、市町村国民健康保険で22年までの5年間に50件確認された。
長崎県保険医協会が23年10月に県内337医療機関に実施したアンケートでは18機関で現行保険証でのなりすまし受診があり、うち17機関は「家族、知人の保険証を本人と偽って受診していた」と回答。
同協会会長でもある本田さんは「家族や知人からマイナ保険証を借りる際に暗証番号を聞いておけば不正は気付かれない。マイナ保険証はなりすまし受診の防止にはならない」とくぎを刺す。
全国保険医団体連合会の松山洋主幹も「なりすまし受診を防ぐにはマイナ保険証の目視確認などが必要となり、今よりも余計に手間暇がかかる。本末転倒で、混乱が広がる恐れがある」と不安視する。
一般社団法人情報システム学会(東京)は国への提言書で、保険証を廃止した後はマイナ保険証の紛失や盗難被害が増え、なりすましリスクが増大すると指摘。
「マイナンバー制度はユーザー視点などが欠如している。根本的な制度設計からやり直す必要がある」と訴える。