新型コロナに見る「日本における中国の影響力」
ワシントンの戦略国際問題研究所(CSIS)が7月下旬に公表した、
「China’s Influence in Japan: Everywhere Yet Nowhere in Particular」と題する調査報告書。
日本で大感染となる経緯に関して、中国の対日影響力行使という観点から論考。
CSISがアメリカ政府国務省の「グローバル関与センター(GEC)」の支援を得て作成した同報告書は、
中国の統一戦線工作部などの諸機関が、日本に対してどのように影響力を行使して、
どのような結果を得ているかを広範に調査していた。
約50ページの同報告書で「日本に影響を及ぼす中国の戦術」という章では、
今年1月からのコロナウイルスの中国から日本への伝染を取りあげた。
同報告書はその時期の日本側の対応として以下の点を述べていた。
・日本政府のコロナウイルスへの初期の対応は控え目だった。
その原因は中国に対する畏敬の念だと思われた。
日本政府が中国の武漢のある湖北省からの来訪者の入国の規制を始めたのは、
2020年2月1日だった。
その時点ではアメリカ政府は中国からのすべての外国人来訪者の入国を禁じていた。
しかし日本には湖北省以外の中国全土からの直行便多数が平常のまま旅客を満載して到着していた。
安倍晋三首相はこの危機に対して、この時点では前面に出ず、
厚生労働大臣にリーダーシップを委ねるという姿勢だった。
日本への国賓としての来訪計画を前にして、
中国に不快感を与えることを避けたため、コロナ対策の前面に出ず、
中国からの日本入国者の停止の措置をとらなかったといわれている。
この解釈が正しければ、この安倍首相の対応は、中国共産党の日本に対する影響力行使活動でも、
近年では最大の効果をあげた結果の一つとなるかもしれない。
同報告書はその「中国の対日影響力行使」の実態として以下のように説明。
報告書が引用した時事通信の2月19日の報道で、
「中国側からの『大ごとにしないでほしい』という要諦が、
日本のウイルス対応が後手に回った要因となった」
「首相側近は『1月時点で中国人すべての入国を止めるしかなかったが、もう遅い』と頭を抱えた」
とも報道していた。
この中国の要望での日本側の遠慮が、日本の新型コロナに対する対応を遅すぎるものにした。
日本でのコロナウイルス感染拡大は、安倍政権が習近平国賓来訪の計画のために、
中国側に忖度をしたことが最大要因になったという認識が、
国際的にも定着したともいえる実態を改めて示した。
中国側からの習近平主席国賓来訪に関する要請が、まさに中国の対日影響力行使の実例であり、
安倍首相がその点に忖度して、中国からの入国者の規制を先延ばしにしたことは、
その影響力行使工作の「近年では最大の効果をあげた」実例だとの見解を明示した。